これまでの日本の民法学は、所有権に基づく物権的返還請求権を、所有者が所有物を占有していない場合に占有を回復するためのものとして捉えてきた。これに対して、フランス法学では、物権的返還請求権のフランス法における対応物である取戻訴権は、所有権を主張する者同士の間で所有権の帰属を争うものとして捉えられている。 本研究は、以上のような認識に基づき、両者を比較することで、日本法における物権的返還請求権もまた、所有権を主張する者を相手とする場合と、そうでない場合とで、異なる機能を果たしているのではないか、という問題意識を提供するものである。
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