本研究は,破産手続,民事再生手続又は会社更生手続等の法的倒産手続において,各手続開始前にあらかじめ設定された担保権,特に動産及び債権双方の譲渡担保や所有権留保等の非典型担保又は担保的機能を有する相殺権をどのように処遇すべきかという問題につき,個別問題に対する対処療法的解決を超えて,倒産法学の観点からの一般的な視座を提示することを目的とする。その際,類似の問題状況の下,近年,民法学・倒産法学の双方から多くの研究成果が現れているフランス法との比較法研究を課題とし,特にフランス法学における「独占的(排他的)担保」の概念に関する研究に着目し,日本における問題状況との比較検討を行う。 最終年度に当たる平成30年度においては,昨年度に引き続き,まず,日本法における保証人・物上保証人の倒産手続における地位に関する研究を行い,その成果に関する論稿を公表し,各種研究会で報告を行うとともに,11月には,このテーマに関する大規模なシンポジウムのパネルディスカッションにパネリストとして登壇し,実務家との議論に参加する機会を得た。また,非典型担保としての集合動産譲渡担保と所有権留保の競合問題について,各種研究会において研究報告を行うとともに,論稿を公表した。さらに,本研究全体の成果報告として,年度末の3月に実施された日仏の研究者による国際シンポジウムにおいて,上記の「独占的担保」概念を中核的な視点としつつ,日本法とフランス法における倒産法と担保法の関係を比較検討する研究報告「倒産手続における担保の処遇:日本」及び議論を行った。
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