研究課題/領域番号 |
16K17020
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
岩川 隆嗣 北海道大学, 法学研究科, 准教授 (20707781)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 民法 / 契約法 / フランス法 / 牽連性 / 双務契約 / 同時履行 / 相殺 / 留置権 |
研究実績の概要 |
双務契約の牽連性を巡る議論を、主としてフランス法を参照して多角的に検討した。 まず、20世紀以降のフランス民法学説の認識として、同時履行原則および牽連性概念がローマ法以来どのように扱われてきたとみられているのかを、通史的に検討した。その結果、牽連性の根拠として、双務契約における債務の対価性と発想を共通するコーズ論を挙げる学説が、民法典制定以前から存在する一方で、広く同一の契約から生じた債務間に牽連性を認める学説もまた、同様に存在することが明らかになった。このような牽連性の理解の相違が、現在に至るまで、フランス民法学説を大きく二分する原因となったと考えられる。 すなわち、前者のコーズ論の観点から牽連性を体系化したのがアンリ・カピタンであり、後者の観点から牽連性を体系化したのがルネ・カサンであった。後者はさらに、同時履行の抗弁と留置権の区別といった日本でもなされている古典的な議論を検討するのみならず、相殺の担保的機能の根拠は同時履行の抗弁の担保的機能にあるのであって、相手方が履行をしない間は自身も履行をしなくて良いという同時履行の原則が、観念的な同時履行を達成させる相殺の担保的機能を基礎づけることをも明らかにしている。このように、本研究の目的で掲げているような、広い牽連性に基づき相殺をも射程に入れる体系は、カサンによってフランス民法学説として結実していたことを確認できた。 また、このような牽連性概念の体系化と相殺の担保的機能の承認には、ドイツ法の影響が存在していたことも明らかになった。これは、普通ドイツ商法や破産法、ドイツ第一民法草案を紹介検討する当時のフランス法学説に因るものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画で予定していた内容は、おおむね達成することができた。すなわち、牽連性に基づく諸制度の沿革、牽連性の意義や根拠、そして具体的な諸制度の内容という三つを主たる検討課題に設定していたが、研究実績の概要で示した通り、これらの課題は一定程度は達成することができたと考えられるからである。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画記載の通り行っていく。 まずは、平成28年度の研究を29年度も継続して行っていく。特に、牽連性に基づく諸制度の具体的な規律の内容といった各論的な問題に焦点を当てていくこととする。あわせて、本研究のテーマと関係するような問題についても検討を行っていきたい。 なお、こちらも研究計画に記載の通り、本研究に関する論文は、平成29年度より雑誌連載を開始する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
額が少なく、書籍を購入するには足らなかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度の助成金と合わせて、書籍の購入等に充てる予定。
|