研究課題/領域番号 |
16K17021
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
瀬戸口 祐基 神戸大学, 法学研究科, 特命准教授 (20707468)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 共同担保 / 一般財産 / 責任財産 / 資産 / patrimoine |
研究実績の概要 |
本研究は、日本法の下での「共同担保」概念の位置づけを探るために、フランスにおける「資産」概念をめぐる議論を検討しようとするものであるところ、平成29年度においては、主として21世紀末におけるフランスにおける学説及び立法の展開について検討を進めた。 このうち、学説については、共同担保に関する原則的ルールが、多様な例外を伴いうるものでありつつも、なおも原則として位置づけられるものであることを示す、様々な指摘が行われてきたことが明らかとなった。 また、立法については、上記例外に該当するものとして、信託制度と個人事業者の有限責任を認めるための制度が整備されたものの、いずれの制度についても、共同担保に関する原則的ルールが法体系上様々な場面で前提とされていることが見過ごされた結果、立法時に期待されたほどの利用実績が生じていないことが判明した。なお、これらの立法は比較的最近のものであり、現地での議論状況も流動的であることから、フランスへの海外出張を行い、現地での資料収集及び現地研究者からの意見聴取を踏まえて、上記結論を導き出した。 平成29年度には、以上の検討内容を踏まえた上で、フランス法に関する検討内容の総括も行った。この結果、共同担保に関する原則的ルールに対して例外を設けることは当然には排除されないものの、この原則的ルールの体系的重要性ゆえに、例外が十分に機能するためには、各種の法制度との関係での行き届いた調整が必要であるということが、フランス法の展開から結論付けられることとなった。 フランス法についてのこのような検討結果は、これまで日本では、必ずしも意識されてこなかったものである。しかし、日本法も、共同担保に関してフランス法とほぼ同様のルールを有していることから、上記の検討結果は、日本法の下での共同担保概念の意義を考える上で、参考になるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度には、21世紀以降のフランスにおける学説及び立法の展開を追跡し、フランス法に関する検討内容の総括を行うことを予定していたところ、いずれの作業も完了させることができた。また、同じく予定されていた研究成果の一部公表も、問題なく達成することができた。 さらに、今後の研究に支障をもたらすような事情も特に発生していない。 以上から、本研究は、おおむね順調に進展しているものと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である平成30年度には、フランス法についての検討結果を踏まえた上で、日本法の下での共同担保概念の意義を具体的に確定する作業を進める。また、その成果を、平成29年度に公表したものに続ける形で、公表することを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額14,469円は本研究に必要な図書(洋書)を購入するために利用する予定であったが、別途調達した資料によりその必要がなくなったため、上記金額が残ることとなった。 次年度使用額として残った分は、翌年度分として請求した助成金と合わせて、資料収集等に使用する。
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