明治民法の起草資料には、条文ごとに「参照」として旧民法や多くの外国の立法例が列挙されている。しかし、列挙されている参照立法例と明治民法の関係については、ほとんどわかっていない。もし、参照立法例の中に規定の由来となるような影響力の強い規定があるとするならば、その規定は、明治民法と内容がほぼ同様であるか、少なくとも同内容を多く含んでいると考えられる。このような推測に基づいて、類似度という指標を用いた分析を試みた。まずは、実験的に、参照立法例の一つであるフランス民法を取り上げ、明治民法との間の類似度を計算し、その結果を考察した。類似度には、いくつかの計算手法があるが、Jaccard係数の有効性が比較的高いことがわかった。 さらに、明治民法の研究基盤整備も進めた。民法の立法資料は、復刻等により利用環境が良好ではあるが、膨大かつ資料相互の関係が複雑でわかりにくいため、研究の際にすべての資料を的確に把握しながら活用することは困難であった。そこで、複雑な資料相互の関係を把握しながら、資料にワンストップでアクセスすることができるように、各資料を電子データ上で整備し、明治民法情報基盤として提供している。この明治民法情報基盤では、起草の各段階での条文の変化を時系列に見ていくことができるツールとして、「Article History」を提供している。Article Historyを使うことで、立法過程の必要な資料を簡単に参照し、変遷過程を把握できる。最終年度は、Article Historyを改良し、起草段階ごとの対照表と各種テキストデータを投入することで、自動的にデータベースを生成できるように改良をおこなった。また、すべての条文を一つ一つ区別する仕組みを導入した。この仕組みとXML形式のデータを組み合わせることで、条文と関連情報を自動的に紐づけて、表示できるようにした。
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