研究課題/領域番号 |
16K17027
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
長野 史寛 京都大学, 法学研究科, 准教授 (60551463)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 損害論 / 差止め / 物損の慰謝料 |
研究実績の概要 |
本研究は,①物損における慰謝料請求,②差止の要件論という具体的問題を素材として,不法行為効果論(責任内容論)における衡量問題についての一般理論を構築するための基礎を得ようとするものである。 この目的の実現に向けて,平成28年度には,両問題に関連する国内の文献や裁判例を収集した。とりわけ①については,貸主による借主の賃貸物件からの強制締出しに関する裁判例が相当数集積していることに着目し,そこでの慰謝料の認容額につき,借主の従前の対応や締出し期間の程度などの要因がどのように考慮されているのか,その判断の枠組を明らかにしつつある。②についても,差止めと同等の機能を果たすと見られる権利保全費用の賠償について,その賠償の可否の判断枠組を,ドイツ法をも参照しながら手がかりを得つつある。その成果の一端は,著書の形で交換することができた。さらに,独仏をはじめとする外国文献の収集・検討についても,さしあたり私自身の研究の蓄積があるドイツ法につき既に着手している。 以上の他,責任内容論における衡量問題を検討するためには,そもそも不法行為法の制度目的をどう理解するかという問題を避けて通れないところ,研究を進めるに当たってこの点に関する私の従来の研究に不満を抱くようになったため,改めて考察を加え,理念型としての複数の制度目的モデルを提示した。その成果は,前述の著書において公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
具体的問題として設定した2つの問題のいずれについても一定の見通しが得られつつあり,また研究の副産物として責任内容論に関するモノグラフィーの公刊にこぎつけたことから,研究の進展は順調と言ってよいと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,前年度に得た見通しを比較法的な知見によって追試するという観点から,外国文献の収集・分析を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内出張を数回予定していたものの,本研究課題にとって有益な研究会等を見出すに至らず,また年度後半まで私自身の問題に対する仮説が具体化しなかったため,他の研究者との意見交換を行う段階に至っていなかったことが,次年度使用額が生じた主たる理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度には,以上による余剰額を文献収集と海外での聞き取り調査に回し,研究の推進につなげることにしたい。
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