信託に関係する者それぞれの利益の具体的内実およびそれらの最適な調整のあり方を明らかにし、さらには物権法・債権法二分論の再考の手がかりとするため、いわゆる価値追跡理論を分析し、その信託にとっての意義および限界を明らかにした。これは、原権利者の権利に由来する価値が返還義務者の下に同一性を識別できる形で存在する場合、原権利者は優先的権利を有するという考え方であり、返還義務者倒産時における権利者の要保護性および第三者の利益との衡量によって基礎づけられる。これによって、信託における利益衡量や公示のあり方に関する手がかりを得た。
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