研究課題/領域番号 |
16K17030
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
木村 敦子 京都大学, 法学研究科, 准教授 (50437183)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 親権 / ドイツ / 親権制限 / 親権喪失 / 面会交流 / 再婚家族 |
研究実績の概要 |
本研究は、(α)親権の帰属・行使者、(β)親権の喪失・制限に関する各論的研究を行うとともに、親権の基礎づけや性質に関する基礎理論について検討・分析するものである。 平成29年度は、平成28年度に続いて、ドイツ親権法を素材として、比較法研究を行った。具体的には、各論的分析として、次の点に関する研究を行った。 ①第一は、親権の内容ならびに親権の行使方法に関する検討である。これについては、とくに、近時注目を集めた子の割礼に関する親の権利をめぐる裁判例・学説、そしてドイツ民法の改正を素材として、親権行使におけるドイツ基本法上の親の権利(6条2項)や自己決定(2条1項)について検討を行った。この研究にあたっては、ドイツの家族法学者にヒアリングを行い、意見交換をした。 ②第二は、親権の喪失・制限に関する検討・分析である。昨年度の研究に続き、ドイツ民法の改正の変遷をたどり、現行法の内容に関する学説の議論状況を整理した。この点についても、親の権利に対する国家の介入と子の保護の必要性の観点から、ドイツ民法や実務における具体的な親権制限・喪失の仕組みやそれを支える基礎的考え方を明らかにする検討を行った。 ③第三は、ドイツにおける面会交流に関する民法や関連法規の内容、実務運用に関する検討・分析である。この検討においては、理論的研究に加えて、ドイツでの面会交流における具体的な支援システム体制を調査するとともに、日本やその他諸外国(アメリカ、韓国)などもあわせて比較研究を行った。これについては、家庭裁判所の裁判官、調査官との間で意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究2年目の平成29年度は、主として、ドイツの親権法に関する比較法研究を順調に進めることができた。 今年度の研究では、親権の内容・行使、親権の喪失・制限、面会交流について、個別具体的な主要テーマに焦点を当て、それぞれについて制度内容や学説・判例を調査することができ、各論的内容に関する綿密な検討・分析を行うことができた。また、これらの分析を通じて、基本権や法的親子関係の意義、婚姻・家族制度のあり方にも関する理論的研究も行うことができた。とくに、ドイツ基本法における親の権利や親の自律についての考え方、ならびにそれらを具体化した法制度の枠組みに関する検討内容は、日本親権法の分析、あるい再構成にとって非常に有用なものであると考えている。 また、これらの研究にあたっては、ドイツ法研究者からの情報提供や意見交換を通じて、検討内容を精査することができたことも非常に有意義であった。 加えて、面会交流の検討・分析においては、家庭裁判所の裁判官・調査官、教育学研究者等との意見交換を通じて、日本の実情に関する知見を深めるとともに、比較法分析にあたっても有益な示唆を多数得ることができた。 以上のように、平成29年度は、ドイツ親権法に関する比較法研究を中心として、十分な比較法調査を行うことができたとともに、日本法の検討・分析に必要な知見、示唆を獲得することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、ドイツ法だけでなく、オーストリア法も比較研究の素材に加え、調査研究を行う。平成30年度秋ごろにオーストリア(ウィーン大学)にて文献調査を行うほか、ウィーンでの研究成果報告を行うことを予定している。 そのうえで、日本の親権法の検討分析に向けて、これまでのドイツ法との比較法研究で得られた成果もふまえ、親権の帰属・行使、喪失・制限に関する研究内容を整理し、分析枠組み・観点を明らかにしていきたいと考えている。これらの研究作業にあたっては、日本での研究会報告などもふまえて、研究内容や分析観点をブラッシュアップしていくこととする。 以上の研究を通じて、平成31年度の最終年度には、日本法の検討・分析を行い、日本の親権法に関する理論枠組みに関する研究成果のとりまとめを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は、ドイツでの文献調査、インタビュー調査を行う予定だった。しかし、インタビューを行う候補者であったドイツ家族法研究者が来日することとなり、その結果、 日本でインタビュー調査を行うとともに、ドイツ法に関する情報提供・意見交換を行うこととなった。そのため、ドイツでの外国調査を行う必要性がなくなったことから、旅費について当初の見込みを大幅に下回ることとなった。 平成30年度は、オーストリアでの文献調査、研究報告を予定しているため、これにかかる旅費として使用することを考えている。さらに、外国文献等を購入するための物品費に充てる予定である。
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