本研究期間において、将来の給付の訴えと確認の訴えとの関係を明らかにすべく研究を進めた。平成28年度においては、比較の対象として、日本法を立法する際に参考とされたドイツ民事訴訟法上における将来の給付の訴えと確認の訴えの関係を解明することに注力した。これによってドイツ民事訴訟法においては二つの訴えがともに提起できるとされる場合には、特に確認の訴えの利益があるといえるのかが問題となること、確認の訴えの利益につき大きく二つの考えがあることを明らかにした。 先に述べた成果を踏まえて平成29年度においては、まずは継続的不法行為に基づく将来の損害賠償を将来の給付の訴えによって求めることができるかとの事件類型につき、新たな最高裁の判断がなされたため、当該事件についてこれまでの研究の成果をもとに評釈を執筆した。この評釈においては、現状では将来の給付の訴えが提起できる場合についてだけでなく、将来の給付の訴えそのもののとらえ方につき複数の理解があること、特に将来の給付の訴えにいかなる意義や機能を認めるべきかとの点についてはさらなる議論が必要であることを指摘した。次に、日本法における将来の給付の訴えと確認の訴えのと関係を整理すべく、ドイツ法における議論を参考にして検討を加えた。日本法においても、ドイツ民事訴訟法において議論されているものと同様の問題が生じる可能性があること、将来の給付の訴えについてどのように理解するかにより、問題の結論が変わりうること、その際将来の給付の訴えによって得られる将来給付判決の判決効の理解が争点になることを明らかにした。
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