研究課題
本研究では、ビッグデータ時代における表現の自由とプライバシーの間の緊張および連関の構造を明らかにした上で、関連する他の権利や利益にも配慮しつつ、表現の自由とプライバシーの価値を調整・統合し、両者を実効的に保障するための制度設計の枠組みと指針原理を提示することを目的として研究を行ってきた。最終年度にあたる本年度は、研究計画に基づき以下の成果を得た。(1)4年間の研究成果を整理・体系化し、制度設計の枠組みと指針原理を提示し、これを応用してプラットフォーム規制のあり方について論文を公表した。論文では、プラットフォーム事業者には、①情報流通の媒介者、②データの集積者、③アーキテクチャの設計者の3側面を見出すことができ、複数の側面の間の関係性と距離を分析することにより、プラットフォームの規制と責任のあり方を方向づけることができるという知見を示した。(2)公法や比較法の研究者らと日米欧の個人情報保護法制を比較検討するシンポジウムを開催し、その成果を論文として公表した。研究代表者は、米国の個人情報保護法制の意義と課題について検討した。その結果、従来の米国では表現の自由との兼ね合いもあり個人情報保護等の強化に慎重な姿勢がとられてきたが、近年では、パーソナルデータの分析・利用が民主政プロセスの操作につながるリスクなどが懸念され、民主政プロセスの維持・促進という表現の自由と重なる価値を図る見地などから、個人情報保護等の強化を求める議論や法改正・法執行の動向も有力になっているという知見を得た。(3)わが国の個人情報保護法制における表現の自由や報道の自由に関連する規定ならびに関連する判例・学説等を検討することにより、個人情報保護と報道の自由や知る権利の価値を調整・統合する見地から、行政機関個人情報保護法における個人情報の開示請求等および行政機関非識別加工情報の提供に関する規定の解釈論を示した。
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国立国会図書館「ソーシャルメディアの動向と課題:科学技術に関する調査プロジェクト報告書」
巻: 2019-5 ページ: 45-56
法学セミナー
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