本研究の目的は、商品間の競争の維持および促進を図るという観点から、標識法(商標法・不正競争防止法2条1項1・2号)に基づく非伝統的商標(商品の形態等を含む)の保護の限界を探ることである。 今年度は、昨年6月に行った学会報告を基にさらなる検討を行うとともに、これまでの研究成果をまとめ、学会誌に論文を公表した。その概要は次の通りである。 商品の形態等は、商標法および不競法2条1項1号等によって保護されているが、二次元的な商標等と異なり、商品間の競争を阻害するという懸念を生じさせる。そこで、競争者が採用することができる代替的表示の選択肢が少なく、競争上似ざるを得ない表示については、標識法の保護を否定すべきである。代替的表示の選択の幅を判断する際には、需要者にとっての代替性を基準に検討の対象とする市場を画定することが望ましい。需要の代替性を判断するにあたっては、原告の商品と機能・用途が共通する他の商品が存在することなどが考慮要素となりうる。これらの作業については、競争法の分野で議論の蓄積があるため、標識法の解釈においても参考にすべき点が多い。以上の解釈は、技術的機能に由来する商品の形態(技術的形態)に限らず、装飾的な表示等の商品の機能とは無関係の表示(非技術的表示)についても妥当する。ただし、非技術的表示については、機能による制約がなく、技術的形態に比べて相対的に表示の選択の幅が広くなるため、実際に保護が否定される事例は多くないと考えられる。 上記の研究成果については、日台国際シンポジウム(名古屋大学)において報告を行い、台湾から来日した知的財産法研究者と意見交換を行った。その他、学習用教材に商標法に関する解説記事を執筆した。
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