研究実績の概要 |
研究計画の段階では、幅広い種類の無体的財貨に関する統一的なアプローチとしての財産法アプローチと契約法アプローチを対比させることを予定していたが、研究を進展させる過程において、特にデジタルコンテンツの購入者の利益の保護に関して、消費者法アプローチや競争法アプローチといった、別の発想の規律があり得ることが明らかとなった。これは現実社会においてグーグルやアップル、アマゾンといった巨大プラットフォームの寡占が進んでいることに対応している。そこでは、利用規約や技術的手段によるコンテンツの囲い込みに対して消費者がどのような対抗手段を有するのかということが中心的課題となる。 この問題に関しては前年度に Aaron Perzanowski & Jason Schultz, "The end of ownership" が刊行されたが、本年度にも、Joshua AT Fairfield, "Owned"、Pascale Chapdelaine, "Copyright User Rights"、Peter Mezei, "Copyright Exhaustion" といった研究書が続々と刊行され、デジタルコンテンツの購入者の利益の保護に関する議論が活発に行われている状況にある。そこでは財産法アプローチの発想を取り入れて利用者の権利を確立させていく方法や、著作権法における消尽法理の現代的意義を再検討する方法、欧州のデジタル・シングル・マーケットにおけるコンテンツ・ポータビリティの考え方など、多面的な検討が行われている。 本研究もこのような最新の研究に触発される形で、次第にその問題関心を、著作権法における消費者の利益保護としての消尽法理の再検討へと向けることとなった。その研究成果は研究発表欄記載の論文及び学会発表として公表された。
|