研究課題/領域番号 |
16K17045
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
伏見 岳人 東北大学, 法学研究科, 准教授 (20610661)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 地方利益論 / 選挙戦術 / 政党政治 / 日本政治外交史 |
研究実績の概要 |
初年度にあたる平成28年度には、当初の研究計画に基づき、戦前日本の政党政治に世界恐慌が与えたインパクトを考える分析枠組みの検討に多くの時間を割いた。近年の政党政治研究の動向を追跡し、近代日本との比較を意識して、同時代のアメリカの政党政治やニューディール政策に関する最新の研究成果の吸収に努めた。これらは、2年目以降に資料調査を本格的に実施する基礎作業として有益であった。また1930年代のアメリカの対日政策やニューディール政策に関する一次資料の調査を実施した。これも同時代の日本政治との比較や連関を考察する際の重要な基礎作業となった。 今年度には、1930年代の日本政治の前提条件になった1900年代の経済不況と政党政治の展開に関する分析を進め、その成果の一部を学術論文として公表した(「初期立憲政友会の選挙戦術(四・完)」)。この論文では、国家財政の制約が厳しかった日露戦後において、政友会が東北地方での鉄道建設要求などを独占的に提示するようになる積極政策は、政友会が全国政党としての凝集性を高め、党本部が地方支部の候補者選定などに積極的な影響力を行使する選挙戦術に支えられた現象であったことを明らかにした。政友会が多数党として安定的な基盤を有するようになる時期に幹事長などを務めた伊藤大八の資料を初めて体系的に用い、東北地方での地方利益要求を主導した彼らの政策と権力基盤の関係について独自の視点から考察できた。この知見をもとに、外国の事例との比較枠組みについて、多くの専門家から教示を得ることができ、後年の1930年代の政党政治の変容を考える視角を豊かにできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、分析枠組みの検討と、一次資料の調査・収集を、同時に進めることができた。また、研究成果の一部を学術論文として公表し、今後の研究の方向性を明確にすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に基づき、二年目も各種の資料調査と、理論枠組みの整理を、同時に進めていく。また、学会等に積極的に参加して、最新の知見の入手に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
古書の書籍購入を実施した結果、物品費として当初に想定していた金額よりも大幅に節約できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
2年目から日本やアメリカの資料館に所蔵されている原資料の調査活動を拡大するため、その旅費や資料複製費などに充当する計画である。
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