研究課題/領域番号 |
16K17046
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森川 想 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (10736226)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 用地取得 |
研究実績の概要 |
本研究は、スリランカの高速道路事業における用地取得・住民移転を題材に、市民の負担受容に関する調査と分析を行うものである。具体的には、(a)移転住民の認識の変化と、それに影響を与える社会的要因を明らかにするとともに、(b)地理情報やフィールド実験を取り入れた調査を実施し、事業や負担に対する認識の決定要因についての考察を行う。 本研究の対象地域であるスリランカでは、現在高速道路の建設が盛んにおこなわれており、特に開通から数年を経た南部高速道路・開通間際あるいは直後のコロンボ外環高速道路・計画中の北部高速道路が同時に存在しており、複数のフェーズにおける道路建設や、それに伴う移転に対する住民の認識を同時に観察できる好機を迎えている。 本年度は、現地においてこのうち中部高速道路事業の用地取得・住民移転が進展しつつあることから、南部高速道路事業における移転世帯への調査と並行して、中部高速道路事業における移転予定世帯に対する調査を設計し、データ整備に重点を置くこととした。まず、研究代表者は前年度にあたる2016年2~3月に南部高速道路事業における移転世帯に対する開通5年後の調査を実施しており、この調査の内容と対象を拡充した調査を、研究協力者の助けを得つつ、夏に実施した。併せて、移転前後でデータが取得できることが期待できる中部高速道路事業の移転世帯に対する調査について、11月に来日したスリランカ側の研究協力者であるカルナティラケとともに現地調査の準備を共同で行い、2月に調査を実施し、データを得た。次年度は、これらのデータ分析をもとに得られた結果の発表を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的に掲げた二つの課題、(a)移転住民の認識の変化と、それに影響を与える社会的要因を明らかにすること、及び、(b)地理情報やフィールド実験を取り入れた調査を実施し、事業や負担に対する認識の決定要因についての考察を行うこと、のそれぞれについて、重複はするものの、それぞれ2年間、また、各年度において、調査結果の解析と、次の調査の準備、実施を行う計画となっている。ただし、第一の課題である「(a)移転住民の認識の変化」について、本年度は特に、現地において整備済み・計画中の事業のうち、中部高速道路事業の用地取得・住民移転が進展しつつあることから、移転前の世帯のデータを入手することができる中部高速道路事業における移転予定世帯に対する調査を早期に実施しておくことが研究目的を達するために重要であると判断した。そこで、本年度は、南部高速道路事業における移転世帯への調査と並行して、中部高速道路事業における移転予定世帯に対する調査も設計し、データ整備が中心的な活動となった。このため、前半二年間のうち、今年度の進捗としてはデータの蓄積の方が先行する形となっているが、次年度は、これらのより詳細な分析と結果の発表に重点を置きたいと考えている。 また、第二の課題である「(b)地理情報やフィールド実験を取り入れた調査」については、既に今回の調査においてもGPS機器を持ち込み、本調査でも地理情報を取得することを試験的に行っている。今後、「(a)移転住民の認識の変化」についてのデータ分析の際、地理情報データが分析に応用可能かどうかを併せて検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度、中部高速道路事業に関するデータが得られたため、次年度は、これまでに実施した調査結果の解析と議論を行い、結果の発表を進める。具体的には、本研究の目的に掲げた二つの課題のうち、「(a)移転住民の認識の変化」について、移転住民の事業や移転・それに伴う制度や政策に関する認識のダイナミクスと、それに影響を与える社会的要因を明らかにし、年度前半については事例研究の報告をWorld Research Forum for Engineers and Researchers等、途上国の参加者が多い会合にて報告する予定である。また、年度後半には、フィールド調査結果の量的分析を踏まえた報告を、Asian Association for Public Administrationなどの学会にて行い、国際論文誌への投稿を行いたいと考えている。 今後の調査に向けては、「(a)移転住民の認識の変化」と関連して、新規の高速道路建設計画は、その援助主体や事業主体の点において性質の異なるものであり、過去に置ける教訓を活かした制度設計となっている場合とそうでない場合があることが中央高速道路事業の調査を実施する過程で明らかになってきた。そこで、移転住民に対する政策的対応や、それらに関する人々の認識の相違などについても可能であれば調査していきたいと考えている。 また、南部高速道路以降の事業においては、移転住民の地理情報等の新しいデータの取得状況の進展が目覚ましく、蓄積がなされている。本研究では、これらのデータを活用しつつ、「(b)地理情報やフィールド実験を取り入れた調査」に取り組むことを今一つの課題としているため、現地の最新情報を確認しながら、事業の進捗に応じて、次々年度に向けた調査の設計に取り組みたい。
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