研究課題/領域番号 |
16K17047
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮地 隆廣 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (80580745)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 徴税 / ラテンアメリカ / 社会運動 / 対外債務 / 資源レント |
研究実績の概要 |
下記「現在までの進捗状況」に説明した事情を踏まえ、本年度は主に徴税能力に関する研究動向の整理と、その決定要因に関わる量的データの整備と分析に注力した。被説明変数については、ICTD (International Centre for Tax and Development) のThe Government Revenue Dataset を代表例に、信頼できるデータが存在する。一方、政府の徴税圧力を強化する変数(例えば国際金融基金や世界銀行など国際金融機関への債務)やそれを弱める変数(例えば天然資源輸出や運河収入などの、いわゆるレント収入)について、変数の候補となるデータが複数あり、その吟味に多くの時間を割いた。また、社会運動に関するデータも説明変数の1つとしてモデルに取り込んだ。 分析に関する暫定的な結果は10月に国内の研究会にて報告した。推計方法に応じて結果が異なるが、主たる結果は次の4つである。(1)レント収入は予想通り、徴税水準を優位に下げる。(2)革新的な政権の方が、やはり予想通り、優位に徴税水準が高い。(3)市民による抗議行動の水準は特に徴税水準に影響を与えない。(4)国際機関の融資への依存度は、予想に反し、徴税水準に影響を与えない。 この中で興味深いのは(4)である。国際機関はラテンアメリカ諸国の債務危機を救済する目的で融資を行い、それと同時に行政能力の向上を要求してきた。しかしながら、それは有意な効果を持たなかった可能性が高い。これは、いわゆる新自由主義政策に対する評価をめぐり、批判をする側の根拠を提供する知見になると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
社会運動と税制改革の関係について、当初は前者から後者を説明するよう試みた。しかし、研究の結果、後者が前者のあり方を規定する可能性があることが分かり、因果関係を正確に提示することが困難であることが判明した。そこで、研究の見直しを目的に、研究対象地域である南米チリより研究者を6月に招き、本研究の位置付けについて意見交換をした。その結果、本研究を始める契機となった徴税能力に関する比較データについて、先行研究にはない知見が確認できる可能性があることが指摘され、社会運動以外の要因も含めた、徴税水準に関する計量的な分析に着手することとなった。
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今後の研究の推進方策 |
徴税水準に関する計量分析については、概ね結論の方向性が見えつつある。より精緻なデータの収集と、2019年度に発表される最新の徴税データを踏まえた研究を行う目的で、期間延長を申請した。研究結果は7月の国際学会で発表予定であり、それを踏まえ、計量の結果を裏付ける事例研究を進める予定である。これまでの研究で各国の税制に関する基礎的な情報は入手されているので、事例研究へは障害なく取り組むことが可能である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の変更により、本年度はもっぱら国内でのデータ整備・分析にあたった。この結果、当初予定していた現地調査が中止となった。
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