本研究は、ロンドンと東京という二つの世界都市の建設過程を分析対象とするものであり、政治制度が、アクターの選好・行動にいかなる影響を与え、そして帰結としての世界都市にいかなる刻印を与えるのかを明らかにしようとした。 2018年度は、ロンドンと比較の上での東京の世界都市建設の分析が完了したことを受けて、世界都市の今日的展開を主たる研究課題として設定した。具体的には、ドックランズ再開発の第二幕とも言えるロンドン五輪を取り上げた。中央政府と地方自治体、運営エージェンシー、民間企業、地域団体といった多くの団体の関係性に注目して、世界都市における大規模イベントの運営体制を詳らかにしてきた。 2018年度の研究成果は、三つ挙げられる。第一に、4つの研究会報告を行った。これらの研究会においては、ロンドンの世界都市建設を中心に、本研究の成果を公開したと同時に、世界都市の今日的展開に関して知見を得た。第二に、出版自体は昨年度であるが、本研究最大の成果である単著『都市再開発から世界都市建設へ‐ロンドン・ドックランズ再開発史研究』に後藤・安田記念東京都市研究所から藤田賞が授賞された。第三に、受賞関係の小論や教科書執筆など、本研究の派生として、一般向けの文章を執筆した。 本研究を通して、ロンドンの都市建設を管理的都市建設、東京の都市建設を競争的都市建設と特徴づけ、ひいてはイギリスと日本の都市行政全般の把握に貢献するとともに、都市建設において、経済や社会状況に還元する見方や特定の個人に依存する見方ではなく、アクターの選好・行動に影響を与える政治制度の規定性に注目する見方を貫徹し、都市建設の可変性と安定性を示した。
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