研究課題/領域番号 |
16K17051
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研究機関 | 国際大学 |
研究代表者 |
矢内 勇生 国際大学, 国際関係学研究科, 講師(移行) (50580693)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 政治学 / 政治経済学 / 政治行動論 / 比較政治学 / 不平等 / 所得格差 / 再分配 / 認識バイアス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、有権者の政治経済的な認識バイアスに注目し、再分配政策に対する政治的選好の形成過程とそれが政治行動に与える影響を分析することである。統計分析による国際比較とサーベイ実験により、有権者の政治経済的な認識バイアスが生じる過程、それが再分配への選好に影響を及ぼすメカニズム、そして認識バイアスに基づく政治行動が有権者にもたらす不利益を明らかにする。 プロジェクトの初年度である2016年度は、必要なデータの収集と、今後実施する予定のサーベイ実験の計画を立てることに多くの時間を割いた。また、入手したデータを分析することで、認識バイアスの特徴が少しずつ明らかになってきた。たとえば、1つの国の中でも有権者の認識バイアスの方向性や程度に大きな違いがあり、その違いは個人の社会経済的属性や、政治的選好、居住地域の特徴によってある程度説明できることがわかった。日本について見てみると、有権者が自らの居住する都道府県の経済状況から国全体の経済状況を判断しており、その結果として国の経済状況を正しく認識し損ねていると疑われるようなデータが見つかった。 予備的な分析結果は、国内の研究会等で報告し、他の研究者からのフィードバックを得た。初年度の研究成果は、2本のワーキングペーパー (1. "Perceived Inequality and Support for Redistribution." 2. "Underestimation of Inequality in Japan") にまとめ、Social Science Research Council のオンラインアーカイブに登録した。2017年度中にこれらの論文を修正し、査読付きの国際誌に投稿する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の研究は、計画よりやや遅れており、予定したサーベイ実験をまだ実施できていない。主な原因は、所属機関の変更と授業担当科目の増加により、当初計画した通りの研究時間を確保できなかったためである。 他方、サーベイ以外のデータについては計画よりも順調に収集できたため、予備的データ分析は計画より早く進めることができている。 したがって、全体としてはやや遅れているが、2017年度中に遅れを取り戻せると考える。
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今後の研究の推進方策 |
まず、計画したサーベイ実験を実施する。初年度に行った理論的な考察と予備的分析から導き出された説明変数の値の変化が、結果変数の値を変化させる原因であるか否かをはっきり示すための実験を実施する。まず、少人数を対象としたプレ実験を行う。プレ実験で明らかになった問題を本実験の設計に役立て、本実験では仮説検証が適切に行えるようにする。特に問題がなければ、プレ実験の結果自体も仮説検証に利用する。その後、プレ実験の問題点を改善し、本実験を行う。1 回の実験で仮説が実証されても、その結果が偶然得られたものであるという可能性を排除できない。そこで、本実験を複数回行い、実験結果が再現されるかどうか確認する。プレ実験の結果から効果量の大きさを予測し、適切なサンプルサイズを確保して本実験を行う。 次に、成したデータを統計的に分析し、認識バイアスの発生とその方向に影響を及ぼす要因と、各要因の影響の強さを、数量的に明らかにする。理論モデルによって提示された仮説を検証するとともに、実験データを適切に分析することにより、認識バイアスと再分配に関する特定の政治的選好の原因を突き止める。第1に、先進諸国を比較するための統計分析を行う。本研究の分析単位は有権者という個人であり、1 時点ではなく複数時点でのデータを分析する。そのため、マルチレベルモデルによる統計分析を行う。実験では、実験外の状況では同じ結果が得られないかもしれないという外部妥当性の問題が生じるので、その弱点を補強する証拠を示すことを目指す。第2に、実験で得られたデータを分析する。本研究が利用するサーベイ実験では統計的な事後処理を施す必要が生じることが予想されるので、因果推論を行うための統計分析を行う。 研究の成果は、国内外の学会や研究会で報告した後、国際誌に投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた実験の実施が遅れたため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、当初計画した実験を実施するために使用する。
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