本研究の目的は、有権者の政治経済的な認識バイアスに注目し、再分配政策に対する政治的選考の形成過程とそれが政治行動に与える影響を分析することである。統計分析を用いた国際比較により、経済格差の程度と変化の両者について誤認している有権者が数多く存在し、それが政治行動に影響を与えていることが明らかになった。 例えば日本では、多くの有権者が所得格差を過小評価していることがわかった。そして、格差の過小評価が、再分配に対する需要の低下につながる傾向が確かめられた。さらに、格差に対する過小評価の程度は、地域によって異なることも示された。その結果、再分配に対する支持は一国内で均質ではなく、地域ごとに異なることが明らかになった。 プロジェクトの最終年度である2018年度は、これらの成果を複数の論文にまとめて公表するための活動を中心に行った。まず、主な研究成果の一つを、ハンブルクで行われた国際学会 (European Consortium for Political Research、於:ハンブルク大学、2018年8月24日) で "Underestimation of Inequality in Japan" というタイトルで発表した。 研究成果として、以下の2論文を国際学術誌に投稿中である。(1) "Underestimation of Inequality: Evidence from Japan." (2)"Perceived Inequality and Support for Redistribution." さらに、所得格差と投票参加の関係を分析する論文も執筆し、現在投稿先を選定中である。 これらの論文で使用したデータは、論文刊行時には公表できるように整理した。また、これらの論文に含めることができなった成果については、今後できるだけ早く論文にして公表する予定である。
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