研究代表者は平成30年度においても引き続いて研究を進めた。より具体的には1) 日本の有権者が過去40年間に投票時に考慮する争点と年齢との関係,および2)有権者に対する政党の動員活動を規定する要因,の二つの研究を進め,研究成果となる論文の国際的な研究誌への投稿を行い,現時点では残念ながら採択にはいまだ至っていないものの,査読者のコメントに基づいて先行研究の再調査や分析手法の精緻化などを行い,論文の改訂を行った。 前者の論文では過去40年間の国政選挙時に行われた選挙世論調査の結果を用い,日本の高齢者がこの期間一貫して若年者より福祉争点に高い関心を示して投票してきたこと,さらに年齢間の関心の差が(近年の人口高齢化および福祉制度の成熟により)拡大してきたを示し,これにより福祉問題において高齢の有権者がその数以上の影響力を持ちえた可能性を論じている。後者の論文では有権者に対する政党の動員活動を規定する要因について,従前より研究を進めている日本の参議院の選挙制度の影響に関する研究とあわせ,従来論じられてきた有権者の年齢や居住年数のような個人的な属性に加え,日本特有の制度的要因,すなわち参院選挙区の都道府県により異なる改選数,これに規定される主要政党間の競争度が,政党の有権者動員行動に無視できない影響を及ぼしていることを示した。 いずれの論文も現在国際研究誌に投稿中であるが,オープンアクセス論文リポジトリサイトであるSocial Science Research Network(SSRN)にアップロード済みである。
|