当初の研究計画での予定していた期間から1年延長したことで、より効果的な研究計画の遂行が実現できたものと思っている。2019年度は延長した最終年度に該当する。昭和戦時期の官僚制の変容を秩序形成の発想の中で見直す試みの中で、商工省などの視点から政治経済体制についての前後の時代の中での位置付けに着目して研究を進めていくことになった。研究成果の中では、一例として、しばしば戦時体制形成の中で独立した存在として扱われがちな岸信介について、政党政治からの慣行の変化や政治経済システムの流動的な状況にかえって翻弄されていた状況を見つけることになった。謂わば弱い岸の姿と言える。体制が流動化し秩序が動揺する中で、各当事者にとって予測しがたい状況が発生することになった。それはそれぞれに自由が増すと共に予測がしにくい厄介な状況を発生させたとも言える。戦時期になってむしろ秩序形成の重要性を実感した岸自身の別の場面での発言とも整合的なものと言えるかもしれない。このような形で戦時期の中での変化の側面と秩序形成を必要とする側面の双方について分析を行い、成果を示すことができた。
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