研究実績の概要 |
今年度は、本研究課題の核心的な問いである選挙の公正性の政治争点化についての考察を行った。これはプーチンが再選を果たした2018年大統領選挙の理解に際しても興味深い論点の一つであったことから、まずは同選挙を受けた現状分析という形で検討を試みた。この成果が「プーチン政権と選挙の正統性」(『海外事情』66巻5号)である。同論文においては、選挙の公正性が政治争点化しなかった2016年下院選挙・18年大統領選挙と、これが争点化した11年下院選挙・12年大統領選挙との比較を行い、政権、野党の戦略にどのような違いがあったのかを明らかにした。 今年度の第二の柱として位置づけられるのが、政権の選挙民動員における与党「統一ロシア」の役割についての検討である。その中でも特に重要なのが、与党は政権にとって必要不可欠な集票の道具である一方で、その分反発を受けやすいという点である。ロシアにおいてはまさに、2011・12年選挙サイクルの際にこの問題が重要な課題として浮上したことが指摘できる。この点について、特に政権による「全ロシア人民戦線」の利用に注目して考察を行った“An Indispensable Party of Power? United Russia and Putin’s Return to the Presidency, 2011-14”(Russian Politics, 4(1), pp. 22-41)が2019年2月に刊行された。また、昨年度中に採択が決定していた“The Politics of Anti-Corruption Campaigns in Putin’s Russia: Power, Opposition, and the All-Russia People’s Front”(Europe-Asia Studies, 71(3), pp. 408-425)が刊行された。
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