研究最終年度にあたる2019年度は、本研究課題の総括として、政権・与党陣営がどのような条件下において選挙を操作するのか(あるいは操作できないのか)、そして、操作が行われた場合に、それが野党や市民からいかなる反応を導くのかという点についての検討を進めた。その際に、前年度までの研究においては主に連邦レヴェルの選挙に注目してきたことから、より多面的な検討を行うため、今年度は地方レヴェルの選挙、特に、比較的競争的であったとされる市長選挙を題材として取り上げることにした。この成果が「現代ロシアの選挙における操作と競争―市長選挙(2009-13年)を題材として―」(『法学志林』第117巻第2号、2020年3月刊行)である。同論文では、政権側の選挙操作という点においてそれぞれに対照的な展開をたどった3市長選挙―アディゲ共和国マイコプ市長選挙(2013年)、アストラハン州アストラハン市長選挙(2009年)、スヴェルドロフスク州エカチェリンブルグ市長選挙(2013年)―を比較し、政権側の選挙戦略と野党側の出方や市民の反応との相互関係についての考察を行った。
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