本研究の目的は、選挙区割りの操作(ゲリマンダリング)の戦略と帰結を理解することである。具体的には、政権党が約60年間にわたり支配したマレーシアを事例に、地理情報システム(GIS)によって区割り変化を直接把握するアプローチを用いて検討した。その結果、与党連合(率いるUMNO)が、支持票を効率的に選挙区間で配分するとともに、選択的に過大代表することで、議席の安定多数と与党連合内でのUMNOの優位を確保してきたことを明らかにした。また、与党連合が2008年の選挙で大きく後退した背景に、議席数の効率的拡大を狙った区割り操作の誤算があったこともわかった。本研究の知見は、比較研究にも寄与するものである。
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