研究課題/領域番号 |
16K17063
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
織田 健志 岩手大学, 教育推進機構, 准教授 (00571796)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 社会 / 共同性 / 政治的なるもの |
研究実績の概要 |
平成28年度の研究課題のうち、「「社会的基督教」の政治思想としての意味の解明」を重点的に取り組んだ。具体的には、「社会的基督教」を説いたパンフレット類、後期の主著でこれまで本格的に言及されてこなかった『発展する全体』(1939)、『国家原論』(1941)の読解を進めるとともに、日本キリスト教史の分野での貴重な先行研究である武邦保、嶋田啓一郎の諸論稿、及び中島の評伝としての性格も併せもつ倉田和四生『中島重と社会的基督教』(2015)について、政治思想の観点から再検討を加えた。ただ、年度途中に同志社大学人文科学研究所から岩手大学教育推進機構へ異動となり、十分な研究時間が確保できず、当初予定していた「東亜協同体」論への中島のコミットメントは、考察することができなかった。 いま一つの研究課題である「中島における政治的多元主義理解の検討」については、『多元的国家論』(1922)に見られる中島の政治観・秩序観について、整理・検討した。また、中島重の政治的多元主義に関する研究で著名な西田毅同志社大名誉教授より、中島の政治的多元主義理解、特にラスキ(Harold Joseph Laski)受容に関して有益な助言をいただいた。 研究成果の一部は、「社会」(米原謙編『「天皇」から「民主主義」まで―政治概念の歴史的展開 第九巻』晃洋書房、2016、所収)で発表した。これは、本研究課題の基盤となる近代日本における「社会」観念の歴史を概観したものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度途中に異動したことにより、研究環境が激変したことに加え、新たな公務に時間が割かれたため、研究遂行に必要な時間を十分確保することができなかった。 そうしたなかでも、中島重の「社会的基督教」に関する著作や後期の主著である『発展する全体』『国家原論』の読解という基礎的研究を進めてきた。また、本研究課題の基盤となる近代日本の「社会」観念に関する論文1本を発表し、最低限の研究成果もあげられた。そのため、「やや遅れている」状況にあるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、今年度の基礎的研究を基に、中島重の「社会的基督教」に見られる「社会」観と「政治」観を解明する。具体的には、中島が「人格と人格とのもっとも根本的、内的結合」とした「共同社会」の観念と権力や公共性の問題を、どのように折り合いをつけたのか考察する。 同志社大学人文科学研究所・第8研究「「転換期」のデモクラシー」(代表:出原政雄同志社大教授)、思想史の会(主宰:和田守元大東文化大学長・飯田泰三前島根県立大副学長)等の諸研究会に研究成果を発表し、大正・昭和戦前期の日本政治思想の専門家から教示を受け、論文としてまとめたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度途中の異動により、執行計画に変更が生じた。「物品費」として計上していた書籍(資料)では、「東亜協同体」論関連の資料を研究遂行を鑑みて次年度に移すことにした。また、「旅費」として、年2回の資料調査を予定していたが、時間の制約上、1回の調査にとどまったため、当初見込みより低い金額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
年度初めに昨年度購入する予定であった文献を購入する。また、異動に伴い、資料調査にかかる費用の増加が見込まれるため、一部をそちらに充填する。
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