研究課題/領域番号 |
16K17064
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研究機関 | 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所 |
研究代表者 |
菊池 啓一 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センターラテンアメリカ研究グループ, 研究員 (80735374)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 政治学 / サブナショナル権威主義 / 連邦制 / アルゼンチン:ブラジル |
研究実績の概要 |
地方政治における民主主義の程度の多様性や変化は、国政にどのような影響を与えるのであろうか。新興民主主義国の地方への権威主義の残存を扱う「サブナショナル権威主義」(subnational authoritarianism)研究はその測定方法や維持・変化のメカニズムを中心に展開されており、権威主義的な地方の存在が各国の民主制度に与える影響を明らかにしていない。そこで、連邦制を採るアルゼンチンとブラジルの上院議員の委員会と本会議での行動を分析し、彼らの選出された州の民主主義の程度が立法過程の各段階での議員行動に与える影響を明らかにする。制度的類似性が高いものの多様性のある両国の国家間比較と地域間比較を行い、他地域の事例にも含意のある地方レベルにおける民主主義の程度と国会議員の行動パターンの関係の一般化を目的とする。 初年度である2016年度は、主にサブナショナル権威主義研究や議会研究に関する近年の研究動向を整理した。また、国政レベルもしくは地方政治レベルの何らかの要因が、他のレベルの選挙結果に影響する「便乗効果」に関する既存の研究についても検討し、その一環として2015年のアルゼンチンの各選挙のケーススタディを行った。その結果、ブエノスアイレス州知事選の結果が、大統領選における与党連合敗北の一因となった可能性が明らかになった。すなわち、GDP成長率の鈍化とインフレの進行、「農業レント」の減少などの他に、フェルナンデス官房長官が大票田であるブエノスアイレス州の知事選で敗れたことの国政選挙への「負の影響」を想定することができるのである。今後は、州政治から国政への「便乗効果」の存在を考慮しつつ、理論枠組みの洗練化や各種データ収集を進めていくことが課題となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2016年度の研究実施計画のうち、理論的考察に関しては、サブナショナル権威主義研究や議会研究に関する既存の研究の整理については当初の計画案通りに実施し、さらに「便乗効果」に関する先行研究を検討することができた。しかしその一方で、予定していた現地調査を実施することができなかったため、データ収集を中心に当初の計画より進捗が遅れている部分がある。2017年度はなるべく早い時期に遅れを取り戻す予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度以降は、昨年度行った理論的考察をベースに、現地調査を重視して研究を進めていく。具体的には、アルゼンチン・ブラジルの両国を訪問し、現地の研究者とのミーティングにおけるディスカッションを通じて理論枠組みの洗練化を図るとともに、上院議員のキャリアパスデータと委員会データの収集作業、インタビューを行う。なお、2017年度は当初の計画よりも長期間両国に滞在する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では11月にアルゼンチンとブラジルでの現地調査を実施する予定であったが、それを予定通りに実施することができなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は10月に1か月弱ブラジリアのみを訪問する予定であったが、予定を変更し、7月から8月にかけて1か月半程度アルゼンチンとブラジル両国で現地調査を実施するための費用の一部として使用する。同調査では、現地の研究者とのミーティングでディスカッションを行うとともに、両国の上院議員のキャリアパスデータと委員会データの収集、インタビューを行う。
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