2015年度採用の本研究は、「国家安全保障戦略としての武器輸出政策の発展をめぐる日独の比較分析」をテーマとして展開した。2012年末に発足した安倍政権は、1967年に導入され、1976年に拡大された「武器輸出三原則」を見直し、2014年に「防衛整備移転三原則」を成立させた。この新原則は、日本国内の防衛産業の国際的展開と、中国の軍事的台頭を牽制し日米同盟の強化および太平洋地域における新パートナーシップ形成という安全保障政策の2つの目的がある。日本は他国との安全保障関係強化の一環として、2014年以降、オーストラリアやイギリスなど各国への最先端の武器技術の輸出に取り組んできた。 本研究は、日本をめぐる分析に加え、ドイツ武器輸出政策に着目し、NATO加盟と国内企業による圧力等の要因を背景に、武器輸出が安全保障戦略として位置づけられた政策であることが確認できた。また、日本の武器輸出に伴う問題点も取り上げた。とりわけ日本社会における戦後の「反軍国主義の文化」を背景に、企業側が「死の商人」といった不評を懸念しながら、早々に武器輸出展開を狙う安倍政権の不十分な支援や国家戦略の欠如を訴えていることも明らかになった。 今後の研究課題として、日本の武器輸出を計画管理する「防衛装備庁」に焦点を当てながら、今尚武器輸出に対して消極的である日本社会や防衛産業に対する安倍政権の戦略を分析し、現在の武器輸出に関する問題と課題を提起する必要性を確認することができた。 本研究の成果は、2017年の欧州日本研究大会(於リスボン)とキングス・カレッジ・ロンドン開催の国際ワークショップ(於ロンドン)、さらに2018年4月のISA(於サンフランシスコ)で報告し、現在はAustralian Journal of International Affairsへ執筆中である(5月末提出予定)。
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