研究課題/領域番号 |
16K17070
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中村 綾乃 大阪大学, 言語文化研究科(言語文化専攻), 准教授 (10467053)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 植民地 / ドイツ帝国 / 太平洋植民地 / サモア / ニューギニア / ゾルフ |
研究実績の概要 |
本研究は、ドイツ帝国の太平洋植民地を考察対象とし、どのように住民の法的地位が規定され、管理されていたのかを比較分析するものである。さらにドイツの統治経験が日本の植民地政策にどのような影響を与えたのかを検討する。これらの分析を通じて、①まずドイツ帝国の植民地支配の構想の中での太平洋植民地の位置づけを明らかにする。②そして日独間の植民地主義の連関を示し、日本の植民地統治の再検討にも資する視角を提供することを研究目的とする。 初年度の2016年度は、ドイツ帝国の植民地統治に関する先行研究、研究史と動向の整理を行った。二年目にあたる2017年度は、ドイツ領ニューギニアとサモアの「混血児」と外国人労働者の法的地位をめぐる政策の導入、変容、帰結を分析した。三年目にあたる当該年度は、ヴィルヘルム・ゾルフ(Wilhelm Heinrich Solf)の伝記と個人文書の分析を行った。特に植民地行政官としてのゾルフの事績に焦点をあて、彼の植民地構想と日本の植民地政策論との関連について分析を加えた。ゾルフは、1900年から10年余りドイツ領サモアの総督を務め、その後植民長官となり、第一次世界大戦中に外務長官を兼任、第一次世界大戦後の1920年から1928年まで駐日大使を務めた人物である。 当該研究に関連する史料と文献調査にあたり、大阪大学附属図書館が所蔵する文献と研究史料、電子ジャーナルを利用した。同図書館を通じ、他大学や研究機関の図書館の利用申請、資料の貸与、複写申請を行った。海外の研究者からの専門知識の享受、情報の共有に際しては、オンライン会議のシステムを活用した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
以下の三点の理由により、研究計画を変更したために、研究の進捗状況は当初の計画よりも遅れている。 ①本研究で用いる史料および文献は、日本語、ドイツ語と英語で書かれたものに限られている。本研究には、植民地支配下に置かれた人々の視点が欠如しており、宗主国ドイツへの抵抗、英国や仏国の植民地政策との相違、脱植民地化の過程など、被支配者が実践した営為に関する考察が不足している。またポリネシアやミクロネシアの歴史と政治体制、家族制度、ジェンダー秩序についても考察が及んでいない。このような視点の欠如と専門知識の欠如を補うためには、他分野の専門家からの専門知識の享受と研究協力が不可欠であった。 ②当該課題に関連する新たな研究成果の公表、文書館史料のデジタル化と情報公開が進んでおり、これらの先行研究と史料調査に想定以上の時間を費やした。 ③所属研究機関における耐震工事の実施に伴う研究室の移転、仮移転先での研究環境の整備のため、国内、海外出張を取りやめた。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度までの研究成果を踏まえた上で、次年度はドイツの文書館史料の収集と分析に力点を置く。さらに本研究の成果を公表する論文を作成する。 2019年度は、史料と文献調査のための国内、海外出張が見込まれる。また本研究の成果は、すみやかな公表につとめる。主たる調査対象の史料、その所蔵機関は、ドイツ連邦文書館とプロイセン枢密文書館である。これらの文書館には、本研究の趣旨、研究成果の公表方法を説明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度の2016年度から当該年度までの研究は、大阪大学総合図書館が所蔵する文献と研究史料、研究設備を利用した。また大阪大学総合図書館を通じて、他の研究機関の利用申請、資料の貸与と複写申請を行うことができた。史料、文献調査については、主に国会図書館デジタルコレクション、電子ジャーナルを利用した。国外の研究者からの専門知識の享受と情報交換に際しては、オンライン会議システムを利用した。以上の理由により、文献雑誌等の購入と複写、専門知識の提供と情報の共有にかかる費用が当初の計画での予算よりも低額となった。 耐震工事の実施に伴う所属研究機関の研究室の移転、仮移転先の研究環境の整備のために、国内、海外出張を取りやめた。 次年度の史料、文献調査においては、引き続き国会図書館デジタルコレクションを利用する。当該年度の使用額の変更に伴い、次年度に繰り越した予算は、ドイツ連邦文書館とプロイセン枢密文書館での史料、文献調査と複写にかかる費用に充てる。
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