本研究の目的は、以下の二点となる。まずドイツ帝国(1871-1918年)の植民地支配の構想を明らかにする。さらにドイツの植民地統治の経験が日本帝国の植民地統治に及ぼした影響を示す。 本研究では、ドイツ帝国の統治下にあったニューギニアとサモアを考察対象とし、住民の分類と管理に関する政策とその変遷を分析した。住民の分類と管理に関する政策を分析するにあたり、ドイツ本国の社会と植民地社会、また英国や米国、フランスなどの他の植民地帝国の政策との相互作用を視野に入れた。またドイツ帝国が導入した植民地政策と日本の植民地政策の連関を検討するために、サモア総督から植民長官、外務長官を歴任し、1921年から1928年まで駐日ドイツ大使を務めたゾルフ(Wilhelm Solf)の議論に焦点を当てた。 本研究の最終年度においては、英国や米国、フランスなどの植民地帝国との関係、アフリカと中国の植民地行政との連関と関係性を視野に入れ、第一次世界大戦前後のゾルフの植民地統治理論と政策について検討を加えた。さらにゾルフを介して、ドイツ帝国の植民地統治の経験が日本の植民学者や植民地政策論者に与えた影響について分析を加えた。 上述の研究目的に沿って研究を進めるにあたり、ドイツ連邦文書館(Bundesarchiv)の所蔵するゾルフ個人文書を用いた。
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