研究課題/領域番号 |
16K17071
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
BOYLE EDWARD 九州大学, 法学研究院, 助教 (30760459)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 国境 / 国家 / 脱領域化 / グローバル化 / スケール / 国家空間 / 空間認識 / 地図作成 |
研究実績の概要 |
本研究は: (1)日本の国境を理解するための枠組みを構築し、(2)日本の国境機能の脱領域化を実証的に分析する。そのため、以下を試みる: (a)国境とはいかに国家の領土に基づいて構築されるかについて検討し、(b)国境がどのように多様なスケールにて構築されるかを理解し、(c)日本とその他の地域における多層的な国境の在り方を比較するものである。 本年度は概ね、(a)(b)(c)に焦点を当てた。2018年4月に開催した「Hokkaido Workshop on Immigration Policy and Border Security in Japan」、7月のABS World国際大会の招集した三つのパネルには、比較的な視点から(a)を検討することができた。続いて、7月における国際政治学会(Brisbane)や、9月の国際社会科学フォルム(福岡)、(b)のスケールについて研究報告を行ったし、論文も発行された。2016年12月に開催した「Borders of Memory」学会の進展にて、Japan Forumの特集を編集し、「Borders of Memory: affirmation and contestation over Japan’s heritage」という論文も近刊発行する。その点について、琉球大学の研究基金にて、中京大学の古川浩司が代表する「アジア太平洋島嶼国・地域のボーダーに関する比較研究:沖縄の離島と南洋諸島を中心に」に協力し、(b)の歴史的「厚み」を増すため協力し、これを2月19日の中央大学校の招待講演「Borders of Memory: War Heritage in Palau and the Yaeyamas」に発展してきた。また、(c)の「領土化」する過程を分析する研究成果を三つの論文に提示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、国内外の先行研究に依拠しながら、グローバル化の新局面における国境の現状、認識、そして展望を分析する研究枠組み作り、そしてこの枠組みを基盤として、重点的な実証研究を行うこととする。カナダビクトリア大学のBorders in Globalization(BIG)研究プロジェクトと協力し、日本の国境変容の重要性を適切な文脈の中で理解することを試みる。BIG プロジェクトの前提は、グローバリゼーション下における国境や領土に関する政策の分析に「領土」という概念は以前より重要性が薄れてきたということである。「Japan Country Study」を共著し、提出しているところ、またUniversity of Ottawa Pressから「Japan’s Borders」について単著する。2020年に出版される予定です。また、2018年4月に開催した「Hokkaido Workshop on Immigration Policy and Border Security in Japan」に踏まえ、Contemporary Japanというジャーナルの特集を編集し、論文を提出する。2019年4月San DiegoにおけるABS年次大会にて、BiG関係の研究成果を報告する予定です。
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今後の研究の推進方策 |
本プロジェクトも最終年度を迎え、今年度はいままでの調査・研究の成果を積極的に出版していくことを試みる。具体的には、東シナ海と南シナ海の境界に関する比較研究(カナダ・クイーンズ大学、ステファニー・マルテル氏)、ネパールとインドにおける国家的インフラ事業に関する研究(ブリティッシュ・コロンビア州立大学、サラ・シュナイダーマン氏)、そして東北インドにおけるJICAの投資に関する研究である(ミルザ・ラーマン氏)。上述に加えて、今年度はよりマクロ的な視点から、境界の多層的スケールに歴史的検討に注目し、アジア研究や歴史学の国際ジャーナル(International History Review, Journal of Asian Studies, Modern Asian Studies)に積極的に投稿する。最後に、日本の地域研究雑誌としても有名な『現代日本(Contemporary Japan)』の特別号の延長として、日本の境界レジームに関する著書を英文と和文の編集に携わる。
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