研究課題/領域番号 |
16K17072
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
詫摩 佳代 首都大学東京, 社会科学研究科, 准教授 (70583730)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | グローバルヘルスガバナンス |
研究実績の概要 |
GHGの中で先進国が独自のイニシアティブを打ち立て、GHGの分散化が懸念される中で、先進国、具体的にはG7諸国の保健外交の実態を明らかにし、先進国の望ましいGHGへの関与のあり方を導き出すことが本研究の最終目的である。H30年度は①アメリカの保健外交の概要と、②昨年度から持ち越した課題、具体的にはフランスの保健外交におけるWHOリヨンオフィスの位置づけという主に二つの課題を、文献調査、関係者へのインタビューを通じて検討した。①に関しては、当初の予定では、2008年ブッシュ政権下で設立されたHIV/AIDSのためのPresident's Emergency Plan for AIDS Relief (PEPFAR)に焦点を当てて検討した。その過程で、「トランプ政権による保健分野への支出削減がGHGに及ぼす影響はどのようなものか?」という新たな課題が浮上し、そちらに重点をおいて検討を行った。②に関しては、フランス保健外交におけるWHOリヨンオフィスの位置づけに焦点を当てて検討した。WHOリヨンオフィスの事業を担当している数名のオフィサーにインタビューを行い、フランス政府の関与の実態、フランスにおける政権交代の影響等について有用な情報を得ることができた。先進国の保健外交への熱心な関与の背景には、政治的な動機が強く働いているという仮説のもと、研究を進めていた。しかし調査の結果、国際機関や研究所など、non-state actorsのGHGにおける影響力が増してきており、先進国の影響力や役割は非国家アクター、とりわけ国際機関の動きとの関連性の中で検討されねばならないことがわかった。以上を踏まえ、現在、論文を執筆している。 このほか、秋には日加先端科学シンポジウムで'Global Health Governance in a globalised world: historical evolution and the present problems'と題する報告を行った。そこで得られたフィードバックも今後の研究に反映させて行きたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究自体は概ね、計画通りに遂行できている。他方、研究を進めていく過程で、例えばトランプ政権による保健分野の支出削減やフランスの政権交代など、計画策定時点では予期できなかった政治上の変化が生じた。また、研究を進める中で、GHGにおいては先進国の保健外交に加え、国際機関の動きも同時に検討する必要性を認識するに至った。このように、本研究を進める上で、検討せねばならない課題が当初以上に増えていることに加え、H29年度は4-7月まで産休を取得していたこともあり、研究の進捗状況はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
H 30年度は、本年度までにやり残した課題に加え、当初の予定通り、イギリスの保健外交について検討していく予定である。上述の通り、今日のGHGにおいて先進国の役割は他のアクターの動きとの関連性の中で検討されねばならず、よって、H30年度においては国際機関の動きにも留意しつつ、研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
世界保健機関(WHO)の史料が一部電子化され、WHOが史料を電子媒体で送ってくれたこと、またWHOオフィサーとのインタビューをface to faceではなく、スカイプで行ったため、当初、旅費に使用する予定であった予算を使用しなかった。
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