研究課題/領域番号 |
16K17074
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
真嶋 麻子 日本大学, 国際関係学部, 助教 (60598548)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 国連開発計画(UNDP) / 民主的ガバナンス / 開発援助業務の現地化 / 発展の権利 |
研究実績の概要 |
本研究は、途上国開発をめぐる現業的活動のなかで国連機関の事務局が積み上げてきた経験に着目して、グローバル・ガバナンスの実相を検討する。以上の研究目的に従って、本年度は主に次の3点について取り組んだ。共通する関心は、いずれも国際開発にかかわる理念や政策の形成にとって、開発業務が行われる発展途上地域(=国際関係の周辺地域)からの影響を明らかにすること、ならびに、周辺地域と国際開発とをつなぐチャネルとしての国連機関の事務局の役割を分析することにある。 (1) 開発援助業務の現地化が制度化された経緯についての調査を行った。特に、1960年代後半から70年代前半にUNDP管理理事会で展開された議論に着目し、制度化の背景にある諸アクターの関心、特に周辺地域の関心を追跡した。 (2) 「民主的ガバナンス(Democratic Governance)」が政策化された経緯についての調査を行った。具体的には、UNDP政策文書を追跡したうえで、それが形成される経緯をUNDP総裁の自伝や、中南米地域での民政への移行期ならびに紛争からの復興期におけるUNDPの援助業務という政策形成に影響を及ぼしたと考えられる諸契機についての分析を行った。 UNDPにおいて政策形成がなされる過程の理解を進めることへとつながった。 (3) 「発展の権利」概念の成立についての研究に着手した。「発展の権利」についての各国の見解を把握し、どこに対立軸/収斂の軸があるのかを明らかにするために、The Intergovernmental Open-ended Working Group on the Right to Developmentを資料として、予備的調査を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、被援助国の有する資金、人材、制度、アイディアを取り入れた現業的活動の制度化について、UNDP理事国間の審議状況の整理およびUNDP内部の政策形成についての一次資料の分析に時間を割いたため、海外資料調査を行うことができなかった。 本研究では、1970年代中葉よりUNDPで開始された「現地化」の試みが、軍政から民政の移行したラテンアメリカ地域における経験に関連付けて理解しうるのではないかという仮説を検証することを課題の一つとしているが、その検証のための資料収集が十分には進んでいない。他方で、近年の研究動向の掌握を進めていく過程で、本研究の課題を、国際機構における政策形成過程の理解という文脈に位置づけて考えることの意義についても承知している。研究課題から派生する問題群の検討にも着手したことが、結果的に本研究じたいの進捗を遅らせたものであり、国際関係における周辺地域に着目してグローバル・ガバナンスの実相を掴むという本研究課題の問題関心そのものについては、漸進的に解明がなされているものである。
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今後の研究の推進方策 |
特にアルゼンチンでの資料調査を実施することで、研究課題を遂行する。なかでもアルゼンチンのUNDP事務所において、UNDP職員として採用された現地スタッフの特徴を職員リストに基づいて明らかにし、軍政期の政治亡命者や民主化運動に携わった政治家・知識人たちとUNDP職員としての採用との関係を明らかにする。加えて、アルゼンチン公文書館Archivo Historico de Cancilleria (ブエノスアイレス)において、同時期に国際機関との間に交わした外交文書を収集する。また傍証として、国立図書館(Biblioteca Nacional de la Republica Argentina)およびラテンアメリカ社会科学大学院(FLACSO)図書館において、軍政期の民主化運動および政治亡命者にかかる文献資料を収取し、UNDP職員の特徴と照らし合わせる。 また、本年度は助成最終年度であるため、学会誌や他の媒体を通じて研究成果を公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 本年度は都合により予定していた海外資料調査を実施することができず、使用額が予定を下回った。 (使用計画) 海外資料調査を実施し、学会ならびに研究雑誌において本研究課題の研究成果発表を行う。
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