研究課題/領域番号 |
16K17074
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
真嶋 麻子 日本大学, 国際関係学部, 助教 (60598548)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 国連開発計画(UNDP) / 民主的ガバナンス / 民政移管 / ラテンアメリカ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、途上国開発をめぐる現業的活動のなかで国連機関の事務局が積み上げてきた経験に着目して、グローバル・ガバナンスの実相を検討することにある。本年度は特に、以下の4点について取り組んだ。 (1) これまでの研究において、アルゼンチンの民政移管期に策定された国連開発計画(UNDP)の国別計画書に「民主的ガバナンス(Democratic Governance)」の萌芽とみられる概念が導入されたことが明らかになったが、本年度は、これがアルゼンチンのみでなく他のラテンアメリカ諸国の民政移管期の国別計画書においても共通する特徴であるのかどうかを判断するため、ブラジル、エクアドル、ウルグアイの政策文書を用いて比較調査を行った。その結果、いずれも同様の傾向は確認できるものの、アルゼンチンほど明示的な概念提示ではないことがわかった。 (2) アルゼンチンの民政移管期のケースに絞り、「民主的ガバナンス」概念の導入プロセスの解明に着手した。UNDP内部文書から、民政移管期の国別計画書策定に関わったUNDP関係者ならびにアルゼンチン政府機関を特定し、政策形成の現地化の様相を明らかにする調査を行っている。 (3) 1970年代のラテンアメリカに対するUNDPの関与を理解するために、高級官僚のアーカイブスの調査に着手した。次年度は本史料を精査し、UNDP職員の行動に表れる国連開発機関の事務局の役割についての分析を進める。 (4) 国連事務局を取り巻く国際政治状況についての理解のために、現在の米国政府による国連政策について、時事情報を整理し発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、研究課題のなかでも特に、国連による途上国開発業務の「現地化」が、ラテンアメリカ地域で本格的な実践に移された理由の解明を行うべく、研究を進めた。1970年代中葉よりUNDPで開始された「現地化」の試みが、軍政から民政の移行したラテンアメリカ地域における経験に関連付けて理解しうるのでは ないかという仮説を検証することを課題の一つとしているが、その検証のための資料収集ならびに分析を進めている途上である。 年度終盤になり、1970年代当時のUNDP高級官僚(故人)のアーカイブスの存在が発覚したため、その分析を急いでいる。また、UNDPの政策に影響を及ぼしているファクターとして、被援助国政府からのインプットにも着目をし、被援助国にとっての「現地化」がもつ作用についても考察する計画であるが、考察対象であるアルゼンチンの政府関係機関の公文書の入手に時間を要しているため、研究の進捗に遅れが出ている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究助成の最終年度である次年度は、これまでに入手した史資料の精査とともに、アルゼンチン公文書館Archivo Historico de Cancilleria (ブエノスアイレス)において、民政移管期に国際機関との間に交わした外交文書を収集し、分析を行い、研究成果の発表へとつなげる。 現在分析中の史料からは、1970年代にUNDPが開発援助業務を「現地化」した初期の頃、権威主義体制下にあったラテンアメリカ諸国にUNDP職員がどのように対応をしていたいのか、その様相を知ることが可能である。こうしたUNDP側の動向と、被援助国政府側の外交文書を照らし合わせて、総体としてUNDPの関与について理解し、UNDP事務局が日常的な業務を通じて、1970年代にラテンアメリカが抱えていた問題にどのように対応してきたのかを考察する。それによって、「UNDPが1970年代中葉に採用した開発援助業務の「現地化」の分析を通じて、国際関係の周辺的諸国おおよび地域の抱える問題への、国連独自の対応を再評価する。」という本研究課題の目的がおおむね達成できる見通しである。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は都合により予定していた海外資料調査を実施することができず、使用額が予定を下回った。 (使用計画) 海外資料調査を実施し、学会ならびに研究雑誌において本研究課題の研究成果発表を行う。
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