最終年度である2019年度は、特に以下の2点について取り組み、研究成果を発表した。 (1) 1970年代にUNDPが開発業務を現地化した初期の頃、権威主義体制下にあったラテンアメリカ諸国にUNDP職員がどのように対応したのかについて、チリの元外務大臣でありUNDPラテンアメリカ・カリブ海部局初代局長を務めたガブリエル・ヴァルデスのアーカイブスをもとに分析し、論文として公表した。現地化政策によって一定の権限を委譲された官僚が、権威主義体制下のチリにおける民主主義勢力の擁護につながる自律的な行動をとっていた事例を把握できた。 (2) アルゼンチン公文書館において、1983年の民政移管期を前後した、アルゼンチン外務省とUNDPアルゼンチン事務所の間のやり取りに関する外交文書を収集した。この調査の目的は、UNDPの政策に影響を及ぼしているファクターとして、被援助国政府からのインプットにも着目をし、被援助国にとって現地化政策もつ作用について考察することにあった。現地化政策の運用過程において、UNDPがどのように被援助国からの影響を受けてきたのか、史料の精査を急いでいる。 本研究課題の遂行によって、UNDPが1970年代中葉に採用した開発援助業務を現地化する政策は、国際関係における周辺諸国および地域の抱える問題への、国連独自の対応の基盤となっている可能性が示された。一般にグローバル・ガバナンスは、地球規模で存在する様々な課題に対して、国家・非国家行為体が共同で管理するための仕組みとして説明されることが多いが、本研究の成果からは、そうした俯瞰的視点からのガバナンスのみでなく、地域が抱える課題へのUNDPの地道な対応のなかにも、人類共通の課題に対処するためのガバナンスのメカニズムが内在しているということが示唆された。
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