本研究は、エネルギー、環境、気候変動分野における米中協力を調査することで、「大国間関係」の構築が国際制度構築に与える影響を明らかにすることを目的としている。とりわけ、米中関係は近年、貿易戦争や新型コロナウイルス感染症の拡大などで著しく悪化してきたことを受け、「大国間関係」の進展がいかに全体の国際制度構築に影響を及ぼすのかという問いに対して、「大国」である米国と中国との二国間協力枠組の「形成」及び「停滞」している現状に着目し説明を試みる。 詳しい事例考察の対象として、エネルギー、環境、気候変動問題をめぐる諸制度の形成を取り上げ、これまで米中協力がどのように寄与してきたのかを明らかにする。本研究によって米中の戦略的協力、また近年の非協力的な実態が明確になり、国際制度の形成において「大国」が担う役割がこれまで以上に明らかになると期待できる。令和2年度において本研究は、引き続き「大国間関係」の発展が全体の国際制度構築に及ぼす影響に関して、グローバル・ガバナンス論、レジーム論に基づいた理論的視点を築こうとした。本研究の理論的視点を検証することによって、「大国間関係」の発展と全体の国際制度構築との間の相互影響を明らかにすることが、本研究の最終的な目的としている。 研究代表者はこれまでの研究内容をまとめて、「パリ協定」をめぐる交渉の進捗状況を引き続きフォローするとともに、本研究と直接に関連する英文著書への書評を掲載したり、雑誌への寄稿も行っている。なお、外部の大学、研究機関、官公省庁、ビジネス・産業界、NGO、メディアなど様々なステークホルダーから頂いた意見、コメント等をプロジェクト実施期間内に詳細に検討し、気候変動の国際規範が各国の温暖化政策、エネルギー構造の変化に「政策学習」を通じて影響を与えることを、当科研プロジェクトの研究成果としてまとめ、国際ジャーナルに投稿し、採択された。
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