昨年度までは一般化割当て問題と呼ばれる枠組みで、買い手と売り手の取引に関する分析を行い、均衡(安定集合解)で実現しうる取引についての分析を行った。昨年度までの研究で、割当て問題において安定集合解はオークションにおける談合プロセスとして記述できることを示した。この成果を国際学術誌に投稿するため、現在論文を改定している。 一般化割当て問題では各買い手及び売り手は一人の相手としか取引することができないことを仮定していた。今年度は全ての主体は複数の相手と取引が可能である状況について分析を行った。そのために、契約付き多対多マッチング問題と呼ばれるモデルにおける均衡の存在条件について分析を行った。既存研究では安定マッチングが存在するためには、各主体の選好が代替性を満たしている必要があることが知られている。本研究では代替性が満たされない状況における安定マッチングの存在問題を考察し、買い手の選好が観測可能代替性を満たす場合の、安定マッチングの存在条件を明らかにした。この結果は、``Existence of a stable outcome under observable substitutability across doctors in many-to-many matching with contracts''と題された論文としてまとめた。この論文の成果を国際会議``The Lisbon Meetings in Game Theory and Applications 2018 ''及び``East Asian Game Theory Conference 2019''(共著者が発表)で報告した。これらの学会では有益なコメントをもらうことができ、現在論文を改定している。
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