研究課題/領域番号 |
16K17080
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
陣内 了 一橋大学, 経済研究所, 准教授 (50765617)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 経済成長 / 景気循環 / 金融 / 大不況 / 流動性 |
研究実績の概要 |
経済成長理論と景気循環理論を統合した経済モデルに、金融部門の不完全性を明示的に取り込んだモデルを開発した。上記3つの要素を兼ね備えた経済モデルはほとんど知られていないので、開発したモデルを含む我々の論文は注目を集めており、すでに複数の重要な論文に引用されている。 その経済モデルを、海外共同研究者であるPablo Guerron-Quintanaボストン大学准教授と協力して、現実のデータを使って推計した。2000年代後半の世界同時大不況を引き起こした原因と、大不況からの回復がこれまでの景気回復より力強さに欠ける理由を分析した。具体的には、金融セクターの機能不全が大きな役割を果たしたという結果を得た。分析結果は論文にまとめ、国際的に評価の高い学術雑誌に投稿した。投稿した論文には編集者とレフェリーから好意的な評価とともに改訂要求が送られてきたため、現在、再投稿に向けた準備をしている。論文の内容は国内、国外の学会で多数、報告した。 研究内容をさらに発展させるために、共同研究者と会って今後の研究の進め方について話し合った。具体的には、資産価格やバブルの影響を研究する。前者に関しては、金融市場で発生した負のショックが資産価格を下げるメカニズムについて研究を行い、分析結果を得た。後者に関しては、資産価格のバブルが経済成長に及ぼす影響を、バブルが生成と崩壊を繰り返すという環境のもとで分析をしている。このような環境はバブルの研究という分野でも景気循環理論の分野でも研究されていないため、注目を集めており、複数の国際学会で発表機会を与えられている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ計画通りのスケジュールで、経済成長理論と景気循環理論の両方の要素を持ち、金融部門の不完全性も明示的に取り込んだ経済モデルの開発を行うことが出来た。海外共同研究者であるPablo Guerron-Quintanaボストン大学准教授との連携やコミュニケーションも概ねうまく行き、学術的貢献に値する分析結果を論文にまとめることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
投稿した論文の早期の出版を目指す。海外共同研究者であるPablo Guerron-Quintanaボストン大学准教授との連絡を密にとり、研究のさらなる発展を目指す。開発したモデルの拡張や、資産価格やバブル資産の役割といった新たなトピックにも取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
共同研究者との打ち合わせのための海外渡航を延期せざるを得ない突発的な事情が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は諸事情により実施出来なかった海外共同研究者との打ち合わせや学会発表を平成29年度に行う。
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