短期の経済変動と長期の経済成長を統一的に理解するための枠組みを開発し、それを用いて現実の経済を理解することを目的として研究を行ってきた。理論的なアプローチと実証的なアプローチの両方を用いた。研究期間の前半は主に理論的な研究を中心に行った。具体的には、経済成長理論と景気循環理論を統合した経済モデルを構築して、そこから得られる理論的予測を丁寧に調べた。研究期間の後半は、実際のデータを用いた実証分析を行った。モデルのパラメーターを推定することで経済の構造を調べ、景気循環や経済成長トレンドの変動の背後にある要因を調べた。 具体的な研究成果は以下の通りである。共著論文1本を国際的に評価の高い英文雑誌「Quantitative Economics」に投稿し、査読と改訂を経て、研究期間の最終年度に掲載が受理された。この論文は、2000年代後半の世界同時大不況とそれに続く景気回復期の経済成長率の低さの要因を実証的に調べたものであり、金融市場の機能不全がそれらに共通の要因であった可能性が高いことを定量的に示したものである。研究期間前半の主な研究成果としては、一本の論文を単著で執筆し、邦文の学術誌「経済研究」に投稿し、査読と改訂を経て刊行した。この論文は、経済成長理論と景気循環理論のこれまでの研究の流れを俯瞰し、それらを統合したモデルから得られる理論的な予測をまとめたものである。研究期間を通して口頭での研究成果の発信も積極的に行い、国内外の学会や研究会で研究成果の報告を行ってきた。
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