研究課題/領域番号 |
16K17081
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
平田 大祐 一橋大学, 社会科学高等研究院, 講師 (40754809)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 信念の異質性 / 組織の経済学 |
研究実績の概要 |
第一に、「信念の異質性と内的動機づけの相互連関」についての研究に着手した。特に信念の異質性がある場合に、内的な動機づけと標準的な誘因契約による外的な動機づけとの間の最適なバランスについて分析を進めた。契約理論・組織の経済学の専門家が集まる国内最大の研究集会であるContract Theory Workshopにおいて、平成29年3月18日に研究経過を報告し、多くのフィードバックを得ることができた。研究論文として成果をまとめる段階にはいたっていないものの、概ね順調に進捗していると言える。
第二に、耐戦略的な資源配分メカニズムについての研究を行った。経済理論における耐戦略性とは、いかなる場合であっても参加者がメカニズムを操作する誘因を持ちえないという性質で、私の研究テーマと関連付ければ、参加者の間にどのような信念・意見の対立があっても設計通りに機能するための頑健性であると言い替えることができる。このトピックに関しては、耐戦略的かつ安定的な配分メカニズムの性質を分析した成果”On stable and strategy-proof rules in matching markets with contracts”(神戸大学糟谷祐介氏との共著)をJounral of Economic Theory誌(168号27-43頁)に公刊した。また、安定性ではなく効率性と耐戦略性を両立するメカニズムについての研究を米国Yeshiva大学の橋本理氏と開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要でも述べた通り、「信念の異質性と内的動機づけの相互連関」についての研究を研究集会で発表できるまで進捗させることができた。「最低でも学会・セミナーで報告して議論の叩き台にできるような予備的な結果を揃える」とした計画と照らし合わせて、概ね順調であると言える。
一方、「組織内の意見対立について経済学以外の分野でどのような議論がなされているのか、より一層の情報収集を行う」という計画については、専門外の分野の文献の収集・読解には手間がかかり、経済学的な枠組みの中で十分に理解を深化させるにはまだ時間が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
「信念の異質性と内的動機づけの相互連関」について引き続き研究報告を行いフィードバックを得る。得られたフィードバックを反映させつつ進捗させ、29年度中に研究論文としてまとめることを目標とする。平成29年度中に行われる海外の主要な学会は応募の締め切りが28年度中に過ぎてしまっているので、29年度は主として国内の大学でのセミナー報告の機会を多く持てるよう、関連分野の研究者にコンタクトをとる予定である.順調に研究成果を論文にまとめることができた場合には、その論文を海外の学会に投稿し、平成30年度には国外での発表機会も多く持てる努力する。
研究が順調に進んだ場合には「コミュニケーションと意思決定プロセス」についての研究にも着手する。平成30年度に研究発表の機会を得るために最低限必要な予備的な分析を行うことを29年度の目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
別財源で購入したソフトウェアで購入予定のソフトウェアを代替することができたため。また英文校正費を学内の助成金で賄うことができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費および出張旅費として使用する予定である。
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