昨年度に引き続き、同質財の配分問題のモデルにおいて社会的に望ましい基準を満たす確率的配分ルールの研究を行った。耐戦略性(個人による選好の戦略的な虚偽表明を防止するための条件)、効率性、および公平性などの望ましさの条件を満たす確率的配分ルールのクラスの特徴付けについて検討を行い、昨年度にまとめたワーキングペーパー(Strategy-proof Probabilistic Rules for the Division Problem of Identical Indivisible Goods with Single-Peaked Preferences)の改訂やメカニズムデザイン分野の国際学会であるConference on Economic Designにおいてこのモデルにおけるこれまでの研究成果の報告を行った。 また、今年度は、投票問題のモデルにおいて、連立耐戦略性の条件を満たす確率的ルール(各選好組に対して選択肢の集合上の確率分布を選ぶ関数)のクラスについても研究を行った。連立耐戦略性は、集団による選好の戦略的な虚偽表明を防止するための条件であり、耐戦略性よりもさらに強い条件である。本研究では、各個人が単峰な選好(その個人にとって最も望ましい選択肢があり、それに近い選択肢ほど望ましいとする選好)を持つ状況において、連立耐戦略性の条件を中心として、効率性や公平性などの望ましさの条件を満たす確率的ルールのクラスの特徴付けを行った。
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