研究課題/領域番号 |
16K17086
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
宮崎 浩一 香川大学, 経済学部, 准教授 (80749713)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 借入制約 / 人的資本投資 / 出生率 / 重複多世代モデル / 引退行動 / 賦課方式の年金制度 / 子育て支援制度 |
研究実績の概要 |
本年度は外生的な借入制約に直面している個人が人的投資を行い、その後出生に関する意思決定を行う重複多世代モデルを構築した。そのモデルを用いて均衡(経済のダイナミクス)を分析し、また、借入制約が緩むと、諸々の経済変数(一人当たりGDP成長率、出生率、経済厚生)がどのような影響を受けるか、比較静学を行った。 借入制約が緩む(借り入れがしやすくなる)と、人的資本の蓄積は増加し、生産には正の影響が出るが、一方、資本市場においては資本の供給が減るため、生産には負の影響が出る。一人当たりGDPの成長率が伸びるかどうかは、これらの影響のうち、どちらが強いか、そして出生率がどう変化するかがカギを握ることが分かった。出生に関しては、子育て費用が時間に重く依存するか、物質的な費用に重く依存するかがカギを握り、前者が後者よりも強いならば、出生率は借入制約が緩めば緩むほど、低下していき、後者が前者よりも強いならば、借り入れが厳しくなればなるほど、出生率も低下していく可能性があることが分かった。また、社会厚生に関しては、借入制約を厳しくした方(つまり、借りにくくする)が改善される場合もあることを示した。 この研究成果を一時的にまとめた論文を今夏(6月)に香港で開催される2017 Asian Meeting of the Econometric Societyに投稿したところ、報告論文として採択され研究報告をする予定である。 また、国立台湾大学のHung-Ju Chen教授との共同研究を行い、金融市場の不完備性を修正する賦課方式の年金制度と子育て支援制度が若年世代の出生行動や老年世代の引退行動にどのような影響を与えるかを分析した。この論文は2016年6月に台湾での国際学会(2016 Taipei International Conference on Growth, Trade and Dynamics)で報告を行い、現在鋭意論文の改訂中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果をまとめることができ、次年度は論文報告の段階まで来ているため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は現在書き終えた論文の報告をできるだけ多くの箇所で行い、様々なコメントをもらったうえで、国際的な研究雑誌への投稿から受理までを目指す予定である。また、それと並行して、これまで外生的な借入制約を仮定していたが、それを内生的な借入制約に置き換えて分析を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はコンピューターソフトウェア(Matlab)の購入をしなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度にコンピューターソフトウェアの購入をする予定なので、そこで使用する。
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