今年度は前年度に行った研究成果を"Benefits of borrowing constraints in an endogenous growth model"としてまとめ、2017年6月にAsian Meeting of the Econometric Society(香港で開催)で研究報告を行った。この論文では、教育ローンが経済成長を促す役割を果たすと同時に、その後の出生などの意思決定に借金返済の負担として現れる経済成長モデルを構築し、経済厚生、経済成長、人口成長を最大にする借入制約を特徴づけた。現在、国際ジャーナルへの掲載を目指し、鋭意改訂中である。
上記と似たような設定で、しかしながら、借入制約が内生的に決定するモデルを構築し、その結果と上記のモデルの結果がどのように異なるのかを現在検証中である。
国立台湾大学のH.-J.Chen教授との共同研究"Fertility and labor supply of the old with pay-as-you-go pension and child allowances" を2018年1月にThe B.E. Journal of Macroeconomics (Advances)に出版した。 この論文では、金融市場の不完備性を修正する賦課方式の年金制度と子育て支援制度が若年世代の出生行動や老年世代の引退行動にどのような影響を与えるかを分析している。この論文では、子育て支援制度は一般的に出生に正の影響を与えると思われがちであるが、それは老年世代が引退しているかそうでないかという状況に依存することを示した。これは、現実の世界においても、高齢者の引退が伸びることと子育て支援制度は両立させて考える必要があることを示唆している。
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