研究実績の概要 |
本研究課題では、輸出企業の市場参入、輸出財バラエティの変化およびマークアップ行動が国際景気循環の相関へどのような増幅効果を持つかについて分析することを目標として掲げた。当初、予定していた研究実施計画の内容のうち、政府支出ショックが、実質為替レートの変動にどのような影響をもたらすかについて、異質な生産性を持つ輸出企業の行動に着目して分析した論文“Government Spending, Trade Openness and Real Exchange Rates: The Role of Endogenous Tradablity”のドラフトを執筆したことが、研究期間全体を通じて実施した第一の研究成果として挙げられる。本研究成果では、貿易開放度と、政府支出ショックの影響との関係について、新たな知見を得ることができたことが重要であった。
また、上記の研究の発展として、内生的に決定されるマークアップを考慮したモデルで、需要・供給ショックがどのように伝播して国際景気循環に作用を及ぼすかを分析していくために、一旦静学的な基礎分析に立ち帰ることにした。このため、ストーン・ギアリー型効用関数を用いた単純な2国モデルを構築した分析を行うことを試みている。
さらに、市場の参入に際して必要な固定コストを低下させるような規制緩和がなされたことで内生的に労働生産性を上昇させる場合、輸出企業の行動変化を通じて国際景気循環にどのような影響をもたらすかについて分析を開始することができたことが、第三の研究成果として挙げられる。この分析においては、ノンホモセティックな効用関数を仮定することで、内生的にマークアップが変動するモデルを構築した。現段階では実質為替レートに対する影響を分析してマークアップが外生的なものとなる先行研究と比較を行うことが可能になっている。これらの結果をまとめることが今後の計画である。
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