研究課題/領域番号 |
16K17093
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
三浦 慎太郎 神奈川大学, 経済学部, 准教授 (80632794)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ゲーム理論 / 戦略的コミュニケーション / 説得ゲーム / 均衡選択 |
研究実績の概要 |
研究実施計画に基づき、平成28年度は二段階目において立証可能なメッセージだけが用いられる環境下(説得ゲーム)での均衡の特徴づけに注力した。戦略的コミュニケーションゲームの特徴として複数均衡の問題が知られており、分析を進めるためには特定の均衡に着目する必要がある。そのため特定の均衡に着目することの正当性を議論する均衡選択理論は、当該分野における中心的研究課題であった。しかしながら本計画で分析対象としている『説得ゲーム』では均衡選択に関する議論がほとんどなされておらず、当該ゲームにおける均衡選択は専ら分析者の主観的理由に基づいたものである。関連モデルとして本計画で扱う『シグナリングゲーム』並びに『チープトークゲーム』との比較を行う上で前述した恣意的な均衡選択は分析上の大きな問題であるため、本年度は説得ゲームの均衡選択に関心を絞り分析を試みた。 本年度の分析を通して以下の結果を得た。第一に情報の受け取り手(以下、受け手)が二者択一の意思決定に直面している場合、既存理論では均衡を絞り切ることが困難であることを示した。第二に『(制約付き)弱支配されない戦略』を選択基準として用いることで、受け手にとって最善の均衡が一意に選択されることを示した。なおこの結果は既存研究で慣例的に行われていた主観的選択と整合的である。第三に『弱支配される戦略の逐次消去』を選択基準として用いることで、受け手が三つ以上の選択肢を持つ場合であっても一意な均衡選択が可能であることを示した。これらは"Equilibrium Selection in Persuasion Games with Binary Actions"、並びに"Unique Persuasion Equilibrium"として草稿にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画において平成28年度は、(1)二段階モデルの構築と(2)説得ゲームにおける均衡選択理論の開発・精緻化であった。後者に関しては、受け手の選択が二者択一である状況を一年半かけて行う予定であった。しかしながら、より一般的な環境下でも機能する均衡選択理論について現時点で完成の目処がついており、この部分については計画以上の進捗状況と言える。しかしながら後者の課題に注力した結果、前者に関しては当初の予定よりも少々の遅れが見られる。以上の理由から総合的に判断した場合、本研究課題の進捗状況はおおむね順調であると結論付けることが出来る。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は前述した衡選択理論に関する草稿を完成させ、専門誌への投稿を目標とする。また二段階モデルの構築に関する予備研究を通して、複数のメッセージが使用可能な環境下ではメッセージ間の代替性・補完性が非自明な影響をもたらすことが明らかとなった。そのため本年度以降はこの点についても更に分析を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内研究会への旅費として使用予定であったが別件の国際学会と日程が被ってしまい、出張の予定を取りやめたため。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度の旅費として使用する予定である。
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