研究実施計画に基づき平成30年度は以下の点に注力した.第一に立証可能な私的情報の戦略的隠蔽を描写した説得ゲーム(persuasion games)の均衡選択問題を昨年に引き続き取り組んだ.具体的には草稿("Prudence in Persuasion")の学会報告を通して内容のブラッシュアップを試みた.中でも結果を応用する上でネックとなるモデルの仮定を緩める点に焦点を当てた. 第二に階層構造を持つ戦略的コミュニケーションゲームの分析を行った.これは当該研究課題である二段階モデルの一般化であり,昨年度に引き続き取り組んだ.具体的には以下の内容を扱った: (1)選挙におけるマスメディアを通じた情報伝達("Manipulated News Model: Electoral Competition and Mass Media"),(2)組織内での権限配分にまつわる情報伝達(Formal and Informal Authority in Organizations for Choice and Execution),(3)情報の受け手が追加的に情報収集する機会がある場合の情報伝達("Biased Intermediaries").(1)は専門誌(Games and Economic Behavior)へ掲載された.(2)は学会報告を通して論文内容のブラッシュアップを試みた.(3)については平成30年度に新しく始めた研究であり,予備的結果を得られた. 第三に情報構造に関する仮定を緩めたチープトークゲームを分析した.昨年に引き続き草稿("Divergent Interpretation and Divergent Prediction in Communication")のブラッシュアップを行い,専門誌への投稿を行った.
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