研究課題/領域番号 |
16K17095
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
久松 太郎 神戸大学, 経済学研究科, 准教授 (60550986)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ロバート・トレンズ / 貿易政策思想 / 比較優位の原理 / 機械 / 成長 |
研究実績の概要 |
山本勝造関東学院大学准教授を共同研究者として招聘し、19世紀前半のイギリス議会における機械輸出問題に関する理論モデルの構築についての研究打合せを行った。具体的な内容は以下の通りである。 機械は生産性を飛躍的に引き上げる財であり、この機械を貿易との関連でみると、機械の恩恵を比較的多く受ける国では工業製品に対して(比較)優位性をもち、そうでない国では非工業製品(農産物)に対して(比較)優位性をもつことになる。 比較優位の原理にしたがえば、両国は比較優位財の生産に特化し、自由に貿易を開始する。 しかし、機械もまた工業製品であり、生産性(したがって貿易の方向)を左右するこの特殊な商品を他の工業財と同じように自由に輸出してよいか(機械輸出問題)が19世紀前半のイギリス議会で論争されてきた。この論争に加わっていたトレンズの貿易政策思想を明らかにすることが、本研究の主要目的のひとつである。今回の打合せでは、比較優位の原理をベースにして、貿易当事国の生産性を変化させるような財の取引を考慮に入れた(動学的)貿易モデルの構築が可能であるかを話し合った。 また、関連する2つの研究("Constructing a Myth that Ricardo Was the Father of the Ricardian Model of International Trade: A Reconsideration of Torrens’ Principles of Comparative Advantage and Gain-from-trade"および"Robert Torrens and the Classical Theory of Growth")をDiscussion Paperとして発行し、海外査読誌に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の中心課題であるトレンズの政策思想を明らかにするにあたって、その基礎となる理論を示しておく必要が研究途上で判明した。しかしそれを適切に表現できる理論を探すことができず、まずはそうした理論を確立することから始めなくてはならなくなったためである。これに加えて、研究代表者の所属機関移動の関係で研究の遂行に支障が出たことも一因である。しかしながら、本研究を遂行するために必要と思われる資料(経済学史分野に限る)の整理は大方終えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
比較優位の原理をベースにして、貿易当事国の生産性を変化させるような財の取引を考慮に入れた(動学的)貿易モデルを構築する予定である。 また今年度にDiscussion Paperとしてまとめた"Robert Torrens and the Classical Theory of Growth"が学界において認められたら、それに関連するトレンズの植民政策思想にも着手していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請者の所属機関移動の関係上、研究の遂行に費やすエフォートを最小限にとどめなくてはならなくなった。こうした事情から、本来支出する予定の金額を大きく下回ってしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
所属機関の変更にともない、利用できる設備や図書資料が異なってきたため、当初の研究計画に沿える設備・図書の購入費に充当したい。また、前年度に行った研究打合せを継続させるために、共同研究者の招聘費に充てる予定である。さらに、Discussion Paperとして今年度にまとめた論文の改訂にともなう英文校閲費として使用する予定である。
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