平成29年度に実施した研究の経過と成果については、6月4日に徳島文理大学で行われた経済学史学会大会で「戦間期日本の新自由主義受容―新自由主義協会と雑誌『新自由主義』前期―」と題する報告を行い、また6月23日にカナダのトロント大学で行われた44th History of Economics Society Conferenceにおいて"An Acceptance of New Liberalism in Interwar Japan: The Early Years of the Magazine The New Liberalism"と題する報告を行った。これまでの研究成果を英語論文New Liberalism in Interwar Japan: A Study of the Magazine The New Liberalism(War in the History of Economic Thought: Economists and the questions of war所収)としてまとめ2017年8月に刊行した。 今年度も引き続き、鶴見祐輔が主宰した新自由主義協会とその雑誌『新自由主義』について研究を行った。今年度は、新しく入手した初期の雑誌4冊をふまえて、その活動の前期に焦点を当てて論じた。第一に、協会設立時の鶴見の構想について、国会図書館の鶴見祐輔文書のメモをもとに考察した。ここでは鶴見祐輔が、河合栄治郎や蝋山政道など幅広い学者に声をかけ、新自由主義のネットワークを築こうとしていたことが明らかになった。次に、彼らの運動における「自由」や「人格」の定義を行い、これまでの研究で取り扱っていなかった、経済問題と対中政策問題等にについて新しく入手した雑誌を用いて論じた。これらのテーマでは、後期ではあまり執筆をしていない清沢洌が積極的に投稿をしているのが特徴的である。
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