本研究プロジェクトでは,初期マーシャルによる学問研究の意義について,経済学史だけでなく数学史や科学史の文脈も踏まえて幅広く捉え,その科学的な要素(すなわち,その特徴と限界)を析出する研究を行った.マーシャルは経済学者の道に進むことを決心するまでに,数理科学,心理学,哲学などの研究に取り組んでいた.本研究では,彼の数理科学の研究に焦点をあて,ケンブリッジ大学所蔵の一次資料に基づいて検討した.その結果,マーシャルが学生時代に学んだ数理科学には純粋数学に加えて力学や光学や天文学が含まれること,そしてマーシャル経済学の基本的な分析概念や方法論がフランス科学から影響を受けていたことが明らかになった.
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