研究課題/領域番号 |
16K17098
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
影浦 順子 中部大学, 全学共通教育部, 助教 (20704802)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 高橋亀吉 / プチ・帝国主義論 / 新平価金解禁論 / ワシントン体制 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本で最初の経済評論家と名乗った高橋亀吉の経済思想について、申請者の観点から時系列に沿ってまとめることにある。具体的には、高橋のマクロ経済政策とその背景にある日本資本主義論の変遷過程を、一次史料をもとに分析し、高橋が、戦前から戦後へ一貫する問題ととらえた日本資本主義の歴史的・構造的つながりについて考察する。 平成28年度の研究においてはは、実施計画に沿って、1)高橋亀吉の戦時下での日本経済再編論および植民地経営論に関する考察を行った。具体的には、①国立国会図書館の憲政資料室に保管されている高橋文庫を中心に、資料調査と分析を行った。②そこでの調査をもとに、高橋が、金解禁論争時代から懇意にしていた賀屋興宣とのつながりで星野直樹から「満州国財政部総務司長 金融経済調査事務」の役職を得ていたことを確認した。そのなかで、満州経営に関しては、領土範囲は、満州国+華北(冀東防共自治政府は承認)を拠点に「日満支ブロック」の形成を提起するなど、この時期の高橋は、欧米資本の導入は考慮せず(ソ連の立ち位置は不明確)、アジア圏ブロックの形成に躍起していたことを確認した。朝鮮経営に関しては、朝鮮総督の宇垣一成からの直接の依頼でコンサル業務に携った経緯が確認できた。 2)高橋亀吉の外部の経済思想を比較分析する研究においては、①日本マルクス主義との比較分析を中心に、高橋のプチ帝国主義論の論旨、②石橋湛山との比較分析を中心に、高橋の新平価金解禁論の論旨について分析を行った。そしてそれらの議論と上記の戦時下での日本経済再編論と植民地経営論とのつながりについて分析を進めてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度の計画にあった高橋の日本経済再編論と植民地経営論に関する資料調査と資料分析などの基礎的研究に多くの時間を割いたため、本年度の研究成果を、論文の形として提出できていないことが大きな反省であり、遅れの原因となっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度の基礎的研究をもとに、高橋の日本資本主義論の核となる「プチ帝国主義論」「新平価金解禁論」の骨子を、高橋の戦時下での立ち位置を視野に入れて、論文の形でまとめることとする。そのうえで、高橋の戦時下における日本資本主義再編論と植民地経営論の具体的な方策について、論文の形でまとめることとする。さらには、同時並行的に当初の本年度の計画にあげている高橋の戦後の経済復興策および高度成長論についての資料調査・分析を進めてゆくこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
・物品費に関しては、図書購入を中心に支出する予定であったが、研究の遅れにより、物品費を繰り越すこととなった。 ・旅費に関しては、国立国会図書館の資料調査を中心に支出する予定であったが、研究の遅れにより調査回数が少なくなってしまったため、旅費を繰り越すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
・物品費に関しては、29年度は、高橋亀吉の外部に関する思想家の著作集などを中心に図書購入をし、繰越分と合わせて費用を使用することとする。 ・旅費に関しては、29年度は、資料調査の回数を増やし、繰越分と合わせて費用を使用することとする。
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