研究実績の概要 |
当該年度は主に,「(1)共変量シフト下での条件付赤池情報量規準(Conditional AIC, cAIC)」「(2)Fay-Herriotモデル(FHモデル)における変数選択規準の開発」に関する研究を行った。 まず(1)の研究の説明を行う。統計モデルを用いて予測を行う際,モデルの構築・推定に用いた共変量だけでなく,予測に関連した共変量の値が利用可能な場合がある。推定に用いる共変量の値と予測に用いる共変量の値が異なる状況(共変量シフト)は,応用上しばしば想定される。しかしながら,cAICを含むほとんどのAIC型の情報量規準は,予測を目的としているにもかかわらず,推定に用いる共変量の情報のみから規準を構築している。この問題に対し,共変量シフト下でcAICを修正した情報量規準を提案する。 次に(2)の研究の説明を行う。Jiang et al. (2011) は小地域推定におけるFHモデルのパラメータ推定法として,Observed best prediction (OBP) 推定と呼ばれる手法を提案した。これは,予測の意味で最適なパラメータの推定値を求める方法である。このOBP推定を用いた場合の適切な変数選択規準の開発が本研究の目的であり,提案手法で選択された変数を用いて構成する予測量をObserved best selective predictor (OBSP) として提案する。また,OBSPの平均二乗予測誤差(MSPE)の二次漸近不偏推定量を求める手法を開発する。 【参考文献】 Jiang, J., Nguyen, T. and Rao, J.S. (2011). Best predictive small area estimation. Journal of the American Statistical Association. 106, 732-745.
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