研究課題/領域番号 |
16K17103
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研究機関 | 東京経済大学 |
研究代表者 |
木下 亮 東京経済大学, 経営学部, 講師 (10732323)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 計量経済学 / 時系列分析 / ファイナンス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、株価などの金融資産の価格の変動要因を抽出することである。平成29年度には、複数の変数間の因果関係のイベント前後での変化を周波数ごとに検証するための方法を構築した。それらを応用し、株価指数に関する価格と配当の因果関係及び日中の価格変動における先物との先行遅行関係に関する実証分析を行い著書にまとめた。 また、国内の個別株の株価変動について、上記の方法を含む時系列分析を用いた実証研究に取り組んでいる。株価は、投資家の企業業績への期待と時間及びリスクに対する選好を反映する。本研究では、株価変動を時系列分析によって要因分解し、分解された要因から投資家の期待及び選好を逆算するといったアプローチを取っている。消費や賃金といったマクロ経済変数と株価に関する時系列モデルを推定し、現在の株価が将来のマクロ経済変数に関して、どのような情報を持っているのかを定量的に分析している。これらの研究結果をまとめ、研究会等で報告し、コメントをもとに改良を進めている。これまでの分析結果から判断すると、消費や賃金などのマクロ経済指標と株価の関係性を明確にすることは困難であると考えられる。そのため、経済学的解釈が困難であるが、有効性が確認されているFama-Frenchファクターなどの要因とマクロ変数の間の関係性に関する分析に移行している。関連する先行研究結果のサーベイは概ね完了しており、今後は実証分析に用いるモデルや変数の取捨選択を行い、結果を吟味していくことになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
時系列間の因果関係の変化を検証するための統計手法を構築し、それらを用いた株価指数に関する実証分析を行い、著書にまとめることができた。現在は当初の予定通り、個別株を用いた実証分析に取り組んでいる。個別株を用いた分析に関する方法や、国内データを用いた実証分析に関するサーベイは概ね完了しているため、今後は実証分析を詳細に行い、先行研究との整合性を吟味していくことになる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、先行研究で有効性が確認されている要因とマクロ経済指標などの経済学的に解釈可能な変数との関係を分析することにより、リスクの定量化とその性質を明らかにすることを目標とする。上記に関するアメリカのデータを用いた先行研究は少数であるが存在しているため、そこで使われている方法を国内データに応用して実証分析を行っていくことになる。しかしながら、日本の株式市場では共通要因以外に企業の個別要因が株価変動に強い影響を与えていることが知られており、これらを調整した上での統計分析が必要となるため、それらに対応する方法を考案していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度には、先行研究のサーベイ及びデータ整理に予定以上の時間を必要としたため、研究結果が明確に成果として表れてくる時期が年度後半になってしまった。そのため英文校正や研究報告のための旅費などが、予定されていたものよりも小さくなった。平成30年度に成果物が仕上がってくるため、それらに対応する上記費用として使用する。
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